基礎から学ぶ!起業の手順書 第2回 創業時の仲間集め

はじめに

こんにちは。独立系ベンチャー投資ファンドDIMENSIONの家弓(かゆみ)と申します。

本コラムでは、起業からEXITの時間軸に沿って、事業推進の論点になり得るポイントを網羅的に紹介していきます。当連載を順番に読めば、検討すべき項目を抜け漏れなく把握できる、そんなコラムを想定しています。創業前の方は第1回から、起業済の方は会社のステージに合う回からご覧頂ければと思います。

私共のナレッジの活用によって、真摯な起業家精神と、正しい事業構想を持つ起業家のみなさまが、少しでも効率的に事業を推進されることを願っています。

第2回の本稿では、創業時の仲間集めのポイントについてご紹介します。

スタートアップでは、創業期の最初の10人が、事業の成否や会社の文化を決めるとも言われます。そんな重要な創業期の仲間集めを、諸先輩方がどのように達成されてきたのか、ご参考にしていただければ幸いです。

 

創業メンバーの重要性

適切な創業メンバーを集めることが如何に重要であるかは、様々な観点で説明できます。

経営: 率直な議論によって、意思決定の質を高められる
実行: 互いの弱点を補い合いながら業務を実行できる
組織: 会社の文化を早期から醸成し、円滑に組織を拡大できる
士気: 順調な時期も苦しい時期も、モチベーションを高め合える

一人で事業を始めるのも勿論素晴らしいことです。また、構想した事業が本当に成立するかを検証できるまでは、一人で進めるという考え方にも賛成できます。

一方で、さあ事業を拡大しよう、という段階までには、信頼できる仲間を是非集めて頂きたいと考えます。

上記で挙げた事業上の利点に加え、僭越ながらVCの視点もお伝えさせて頂くと、「正社員として」 仲間を引き入れられていること自体が、出資の確度を高めることもあります。優秀なメンバーが人生をかけて参画している事実が、事業の蓋然性、チームの本気度、会社としての魅力、等の一つの裏付けになるためです。

また、前回記事でも触れた通り、創業メンバーが2人以上いることが、事業の成功確率を上げると統計データも示しています。

それでは、どのようにして創業メンバーを集めれば良いのでしょうか。

 

創業時の仲間集めのポイント

様々な起業家の皆様とお話をさせて頂く中で、創業時の仲間集めを成功させるためのポイントとして、以下を挙げられる方が多いように感じています。

仲間になって欲しい人に早くから声をかけながら、何人も諦めずに誘い続ける
ビジョンや熱意、志を伝える
信頼できる、誠実な人を仲間にする

本稿をご覧になって下さっている皆様には、より正しいニュアンスでお伝えできるよう、弊社オウンドメディアにて過去インタビューさせて頂いた起業家の皆様の言葉を引用し、ご紹介させて頂きます。(※以下に記載の皆様のご役職は、インタビュー当時のものです)

弁護士ドットコム 元榮 太一郎社長
私は常に、こういう人を求めていると周りに言いふらすようにしていました。居酒屋に集まって、情熱を込めたパワーポイントのスライドを見せながら、「こんな感じだけど、どう? やってみない?」と誘ったら、みんなが「やりたい!」と答えてくれて、起業して4カ月ほどでオリジナルメンバーが揃いました。」

SHIFT 丹下 大社長
まずは「人として相性が良いこと」の見極めです。どれだけ力があろうとも、人として相性が悪ければ仲間にしてメリットはありません。あとはやはり「夢・ビジョン」と「学ぶ姿勢」。実績のある人ほど、待遇などではなく最後は「夢・ビジョン」に興味を持ったかどうかで参画を判断します。」

Minimal 山下 貴嗣代表
「優秀な人材を獲得しに行く方法は、「こういうビジネスをやるのって面白いよね」「こういう世界っていいよね」というビジョンを発信し、共感してくれる人間を集めていくしかないと思います。ベンチャー企業には志以外、何もないですからね。」

マネーフォワード 辻 庸介CEO
「リスクしかないので、漕ぎ出したばかりの船なんて誰も乗ってきません。ですから、知り合いに声をかけて、「こういう世界をつくりたい」とひたすら口説きまくりましたね。それで少しずつ共感してもらいました。当然、入社してもらいたい人は、各会社のエース。なかなか今いる組織は抜けられません。逆説的ですが、すぐ入社できるような人とは、組みたくないなとも思っていました。この人に任せてもし失敗して船が沈んでも仕方がないと思える人にお願いしようと決めていました。また、性格・考え方ともに、明るくてポジティブな人、チームワークができる人が良いと思っていました。」

アライドアーキテクツ 中村 壮秀社長
「「時代が変わる」「市場を創る」って、誰しもが興奮しますよね。興奮こそが最も人を呼び寄せる要素です。なので、目の前のチャンスに経営者自身が興奮していて、その魅力を伝えていけば自ずと人が“集まってきてしまう”。これが本質的には仲間集めにおいてあるべき姿だと思います。候補者の見極めには、「良い会社を一緒に創っていこう」という意識を持っているかどうかが重要です。」

GA technologies 樋口 龍CEO
「「仲間はいることが当たり前」のように教科書には載っていますけれど、本当は仲間集めこそ難しいし、大事なことですよね。仲間集めに大切なことは、「言い続けること」。セールスの交渉と同じだと思います。仲間集めも「擦りこみ」と「確率論」です。場数を踏む、打席に立ち続けることが重要だと思います。」

メドピア 石見 陽社長
「最初は熱意しかないと思います。自分のやろうとしている「志」と、「あなたが入ってくれることで、これくらい世の中が変わります」ということを、情熱を持って伝えていくしかありません。インセンティブで動いてきた人は、たとえ優秀だとしても結果としてベクトルがずれてダメになることが多いです。皆がイメージできる理想像を描き、どれくらい熱意を持って伝えられるかが仲間集めの成否の分かれ目だと思います。」

アトラエ 新居 佳英社長
ネバーギブアップの精神しかないです。最長で3年かけて口説いた人もいました。ふられてもふられても、追いかけ続けて最後に振り向いてもらえれば、ふられてないことになります(笑)。優秀な人を口説く時は、相手が何にパッションを持っているかを聞くことも大事です。相手が将来やりたいことを聞いた上で、「だったら一緒にやろう」とか「こういうビジネスを一緒に立ち上げられるんじゃないか」と伝えるようにしていました。私は「この人と働きたい」という気持ちがベースなので、ポジションはその人のために作ればいいと常に思っています。」

ウェルスナビ 柴山 和久CEO
「シードラウンドの資金調達のニュースが日経新聞に掲載されたおかげで、創業メンバーが集まりました。資金調達をすること自体が事業としての強い意思表示となります。また、プロトタイプでいいから「サービスが動いている」ことも重要。「0」の状態と「0.1」の状態では、周囲の反応が全く違います。エンジニアの人からすると、少しでもサービスが動いていると「自分だったらこう改善できる」といった意欲が湧きますよね。「サービスが動いている」状態を早く作り上げることが仲間集めの近道だと思います。」

アカツキ 塩田 元規CEO
「正直にいうと、創業期は人を選んでいる余裕など無かったので、メンバーはみんな友達でした。創業期から片手間に手伝っていたら、こっちの方が楽しいから結果的にアカツキに入社してくれたという成功例がいくつもあります。選んでいる余裕はなかったものの、「裏切らなさそうな人」に声をかけるということは強く意識しました。仕事抜きにしても、ずっと一緒にいられるような人は裏切りにくい関係性を築けます。」

シンクロ・フード 藤代 真一社長
何よりも「信頼できる」ことと、「一緒に挑戦したい」と思えること。この2軸で創業メンバー集めは考えました。私の場合は、創業メンバーはこれまで知り合ってきた友人などを思い浮かべながら、「この人だ!」と思った人に声をかけていきました。ビジネスモデルうんぬんではなく、人生の価値観を熱くぶつけたからこそ、共感して一緒にやってくれたのだと思います。」

五常・アンド・カンパニー 慎 泰俊社長
自分の無力さを素直に認めることが、自分より優秀な人を仲間にする秘訣だと思っています。「4番バッターは俺、ピッチャー俺、監督も俺。そんなチームだけど来る?」といった態度で人を集めようとすると、自分のファンはくるかもしれませんが、すごい人は集まってきません。自分の無力さを確信すると、その必死さが人を口説くときの態度に出ます。優秀な人であればあるほど口説かれ慣れているので、起業家の本心を見抜いて、力を貸すかどうか判断すると思います。」

LegalOn Technologies 角田 望CEO
いいなと思った人はひたすら口説く。ウォンテッドリーのスカウトも日課のように送り続ける。その行動量がまずはポイントだったように思います。あとは、仕事の面白さを精一杯伝えること。そして素直に、自社の状況を良く見せすぎないこと。まだ世の中にないプロダクトのコンセプトを素直に伝え、共感してくれたメンバーが今のLegalForceを支えています。」

ユーグレナ 出雲 充社長
仲間集めに苦労している起業家ってたくさんいますよね。で、私は聞きます。「あなたは何人に声をかけたんですか?」と。私の場合は「ユーグレナでバングラデシュの子どもたちを救おう」と本当に毎日、覚えきれないほどたくさんの人に言い続け、断られ続けていました。起業もすぐに成果が出るケースもあれば、5年10年しつこくやり続けて突如ブレイクするケースもありますよね。必ずタイミングは来ます。そしてそれがいつなのかは誰にもわかりません。ですので、その時が来るまで挑戦し続ける。これが人も、組織も、事業も共通する成長法則なのだと思います。」

 

創業時の仲間集めは、これをやれば必ずうまくいく、というような正解のあるトピックでは無いと思います。

とはいえ、先を行く起業家の皆様は共通して、「仲間になって欲しい人に早くから声をかけながら、何人も諦めずに誘い続ける」、「ビジョンや熱意、志を伝える」、「信頼できる、誠実な人を仲間にする」 といった点を意識されていたようです。是非、参考にして頂ければと思います。

DIMENSIONでは、出資先の皆様の組織構築支援を積極的に行っております。組織について、或いはそれ以外のトピックでも、お困りの点があればお気軽に弊社メンバーまでご相談下さい。

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