
#海外展開
「次世代の人々が地球を理解し、レジリエントな未来を実現するための新たなインフラをつくる」というミッションを掲げ、小型SAR衛星と関連システムの開発・製造・打上を通じた衛星コンステレーションの運用と、その取得データの販売・解析ソリューションを提供する株式会社Synspective。同社代表取締役CEO 新井 元行氏に、事業作りや組織構築、ファイナンスの要点などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)
ーー宇宙戦略基金による後押しもあり、日本でも宇宙分野の様々なスタートアップが精力的に活動しています。日本の宇宙系スタートアップで、今後注目すべき領域があればご教示頂けないでしょうか。
宇宙に関連した市場はまだまだ伸びるでしょうから、正しく取り組めばどの分野でも可能性はあると思います。
一方で、市場の成長に押し上げられてどの会社も伸びていくかというと、そうでもなくて、今がちょうどその過渡期だと思っています。プレイヤーがだんだんと明確になり、M&Aも進んでいくでしょう。
また、私は宇宙産業の議論をする際に、「宇宙産業」という枠組みに捉われない方が良いと考えています。
これはAIと同じです。「AI産業」というものは存在しないですよね。結局のところAIは、ソリューションを提供する際の裏側のテクノロジーのひとつであり、手段でしかありません。
ですので、産業連関表の中に「宇宙」や「AI」といった項目は今後も入ってこないと思っています。
結局のところ、最終需要は農業や食料生産、機械生産などであり、宇宙産業は、地上での既存の経済活動における生産効率の向上やリスク低減につながるものという形で整理されていくはずです。
「宇宙産業」という枠組みに捉われるのではなく、解決すべき社会課題や需要が何なのかを見極め、それに対して宇宙技術をどう活用できるか、というアプローチで考えていくと良いでしょう。そうすると、様々な面白い領域が見えてくるはずです。
ーー仰る通りだと思います。国産ロケットの領域についてはいかがでしょうか。宇宙往還機や大型ロケットなど、様々な展開を見せていますよね。
海外に打ち上げを委託すると、輸出の手続きが煩雑だったり、円安のデメリットがあったりするので、国内での打ち上げはぜひ推進して頂きたいところですね。
ただ、単純に正攻法で進めていては、グローバルでの競争に追いつけない懸念があります。
SpaceXやRocket Lab、中型ロケットのArianeSpace、小型ロケットで事業を始めたFirefly Aerospaceなど、今年から来年にかけて、商用ロケットの本格的な立ち上がりが見込まれます。
日本のスタートアップは、後発となる中で、技術面だけでなくサービス面での差別化が重要になるでしょう。
例えば、Rocket Labが手掛ける衛星開発プラットフォームや、D-Orbitの軌道へのラストワンマイル輸送など、人工衛星の数が増えたことによって、新たなビジネスモデルが幾つも生まれています。
ロケット企業としては、単にロケットを打ち上げるだけではなく、こういった新しいサービスもセットで提供することで、一つの差別化に繋がるだろうと思っています。
ーーありがとうございます。最後に、御社の今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
昨年、ここ中央林間にヤマトテクノロジーセンターがオープンして量産体制が確立し、宇宙戦略基金も無事獲得できました。
また、GDPの2-3%は安全保障にかけることが世界のトレンドになる中で、安全保障分野に近い私たちの事業のマーケットが明確になったことで、投資家への説得力が高まり、IPOの実現にもつながりました。
今後5年間は、衛星の数を増やすことに注力します。日本をアンカーカスタマーとしつつ、各国政府にデータを提供していく形で事業を展開していきます。
その過程で、衛星の数が十数機以上になってきた所で黒字化が見えてきます。それ以降は、利益の再投資で事業を伸ばしていけるため、ファイナンスが身軽になり、色々なことに挑戦出来るようになってきます。
いつまでも官需要に頼っているつもりはありません。真の成長を実現するためには、グローバルのプライベートセクターにソリューションを提供するような事業展開が重要です。
今後、30機以上のコンステレーションになると、衛星データの供給量が、官による需要量を上回ってきます。
そうなれば、既存アセットが生む余剰データを活用して、民間向けにソリューションサービスを提供できるようになり、収益性の高い事業にシフトできると考えています。
また、その先には、私たちのミッションである「次世代のインフラをつくる」という大きな目標があります。
既に世界銀行や国連をはじめ、全世界のビッグプレイヤーとのプロジェクトが始まっています。彼らと私たちのデータ、アナリティクスを結びつければ、ひとつの大きなインフラを構築できるはずです。
これを使えば、SDGsの目標達成にも貢献できると考えています。
なぜなら、私たちのインフラがあれば、地球環境の状況を正確に把握・定量化でき、データドリブンなアプローチが可能になるからです。
例えば、「生活習慣病のリスクが高いので食生活を改善して下さい。」と言われても、具体的に何をどの程度改善しなければならないのかが分からなければ、効果的な打ち手は打ちづらいと思います。
そこで人間であれば、体重計などで健康状態を測りながら改善していくのですが、今の地球は、その体重計すら持っていない状況なのです。だから、169個あるSDGsの目標も、まだ16%しか達成できていないのだと考えています。
この地球にとっての体重計こそが、私たちの構築するインフラなのです。
これは、技術的には実現可能というところまで来ています。国連などとの連携によって、各SDGs項目の専門家たちに私たちのインフラを提供することで、科学的なアプローチによって、サステナビリティな社会に向け前進できればと願っています。
私たちはこの次世代のインフラを、2035年までに実現するつもりです。
ビジネスとして成立する持続的なインフラを通して、社会課題を定量的に解決していく。
これが、私たちの今後の大きな展望です。
ーー今後の展望を実現していくために、御社はどのような人材を求めているでしょうか。
短期的には、衛星の数をどんどん増やしていく必要があるため、技能工の方や、生産技術、品質管理のできる方たちを採用したいと考えています。
現時点で宇宙産業に関わっていない方でも全く問題ありません。自動車、航空機、電子機器、医療機器など、様々な業界からの知見を持ち寄って、最適な製造プロセスを追求し続けていきたいと思っています。
また、中長期的には、データサイエンスや機械学習、アナリティクス開発など、ソフトウェア領域のエンジニアも必要になっていきます。
是非、今からでもSynspectiveへ飛び込んで来ていただけたらと思います。
ーー第100回目のインタビューにふさわしい、大変興味深いお話でした。本日はありがとうございました。
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