株式会社TENTIAL 中西 裕太郎社長が語る「ヒット商品を生む着想」(第2話)

「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」というミッションを掲げ、アスリートを始めとした多くの人々のチャレンジをサポートする株式会社TENTIAL。2025年2月に東証グロース市場に上場した同社 代表取締役CEO 中西 裕太郎氏に、起業家に必要な素養や商品展開のポイント、上場時の株価形成などについて、DIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)

コストを妥協せず、「正しいもの」を作る

ーー主力商品である『BAKUNE』は、「Nice to have」と思われがちなスウェットでありながら上下セットで3万円前後という安くはない価格帯で、累計販売数百万セットという大ヒットをしています。どのように商品の着想を持ち、製造・販売・マーケティングといった一連のビジネスフローを拡充されたのでしょうか。

根底には、「社会課題に向き合う」という一貫した姿勢があります。

私自身の創業の原体験は、自分自身が病気を経験したことです。「健康でなければ挑戦には大きなハードルが生まれる」ということを痛感し、人々が健康であり、新しいことに挑戦し続けられる社会を実現したいという強い願いが生まれました。

スポーツ分野でも、その他の分野でも、挑戦には成功もあれば失敗もあります。

しかし、その過程で健康を損なってしまっては、挑戦のハードルを維持することが難しくなる。挑戦する人たちへのリスペクトがあるからこそ、彼らの健康を支えたいという想いが常に私の根底にありました。

そこで、アスリートはもちろん、アスリートを支えるスタッフの方々の姿にも着目し、日常生活の土台である「歩行」を支えるインソールの開発から事業をスタートさせました。

アスリートに限らず、立ちっぱなしだったり、移動が多かったり、足に負担がかかる働き方をする方々に向けて、スポーツ界では当たり前に使われているインソールを日常生活に取り入れるコンディショニングインソールを販売しました。

その後、アスリートの友人と接する中で、遠征や出張が多く、時差や移動による睡眠の課題が大きいという実態を知りました。

そこで、睡眠の側面からコンディショニングをサポートするためにパジャマの開発に着手したことが、『BAKUNE』誕生のきっかけです。

コロナ禍で健康投資への意識が高まったという市場環境も追い風となりましたが、アスリートやビジネスパーソンの生の声からニーズを確信できたことが、成功の大きな要因となりました。

 

 

『BAKUNE』が高単価である理由は、安全や品質管理の体制、つまり裏側のガバナンスにしっかりとコストをかけているからです。

私たちはヘルスケア企業として、本当に正しいもの、エビデンスのあるものを届けたいと考えています。そのため、自社で医療機器のライセンス(第2種医療機器製造販売業)を取得し、製造・販売までのマネジメントをすべて自社で行う体制を整えてきました。

実は医療機器の中でも、クラスⅠ、つまり一般向けのカテゴリーにおいては、比較的簡易的なプロセスで医療機器登録・販売ができてしまいます。

そんな中で厳密に医療機器製造販売業のライセンスを取得し、自社で製造から販売までを担い、ガバナンスを効かせて運営している会社は、そう多くありません。

ライセンス取得や品質維持には多大なコストがかかりますが、そこを妥協せずに「正しいもの」を作る。それが、ブランドとしての信頼に繋がっていると思っています。

もう一つの大きなポイントは、オンラインでの販売チャネルです。

既存メーカーは、売上の8割程度を店舗に依存している会社が多い状況に対し、弊社の売上は7割以上がオンライン経由です。

私たちはもともとメディア事業からスタートしたこともあり、オンラインマーケティングに強みを持っていました。

しかし、マーケティング力だけでなく、本当に良い「ものづくり」をしなければ消費者の信頼は得られません。逆に、優れた製品があってもマーケティングが弱ければ、認知度を高めることができません。

そのため、「ものづくり」と「マーケティング」の両輪をいかに両立できるかが弊社の重要なテーマであり、強みであると考えています。

また、リピートの観点では、「ブランドの一貫性」が重要です。

創業ストーリーや社名の由来、採用活動など、組織の「中」と「外」で発信するメッセージを統一し、組織のミッション・ビジョン・バリューに真摯に向き合う。

まだまだチャレンジの途中ではありますが、幸いにも多くの現役アスリートの方々から共感を得ることができ、ユーザーの皆様がリピーターとなってくださっています。

これは、「当たり前のことをしっかりやり続ける」という姿勢をきちんと評価していただいた結果だと感じています。

 

「在庫過多」から学んだ守りのガバナンス

ーー現在、15カテゴリーで約300の商品を展開されています。これまで多くの商品を展開されてきた中で、「これでは上手くいかない」と学んだ失敗はありますか。

振り返ると、大きく2つの失敗があったと感じています。

1つ目は、コロナ禍に発売したマスクの事例です。

当時、主力商品としていたインソールの売れ行きがコロナの影響で鈍化した際、即座にマスクを発売したところ、想定を上回る反響を得ました。

その中で、本来なら2ヶ月分程度の発注で様子を見るべきところを、仕入れ単価が下がるから、と半年分もの在庫をまとめて発注してしまいました。しかし、ブームが落ち着き売上が鈍化すると、当然ながら在庫回転率は悪化します。

恥ずかしながら当時は、「今売れなくても、在庫として持っておけばいつか売れるだろう」という「ファイナンス無知問題」を抱えていました。

振り返ると、「攻め」である商品開発やマーケティングには注力していましたが、在庫管理やバックオフィスなどの「守り」の体制が圧倒的に不十分だったと感じます。

スタートアップは損益計算書(PL)上の「売上」や「利益」には注力しがちですが、貸借対照表(BS)的な視点、つまりいかに「資産」を効率良く運用するかという意識が疎かになりがちです。

大量に仕入れれば原価は抑えられますが、その分、在庫回転率が悪ければキャッシュフローを圧迫します。在庫がどうキャッシュフローを圧迫するのか、BSにどう影響するのかを、リアルに理解できていなかったんです。

幸い大きな問題には至りませんでしたが、この経験からBSを意識した適切な在庫管理のもとで、「売れ続ける商品」を作ることが重要であると学びました。

現在のTENTIALの、強固なガバナンスと攻守のバランスが取れた組織体制は、この経験での学びが活かせている部分も多いと感じています。

 

 

2つ目は、販売チャネルと商品の相性の見極めについてです。

初めて手にするブランドの場合、消費者はどうしても「サイズ感を確認したい」「試着したい」という心理が働きます。

そのため、オンラインで売りやすい商品と、オンラインだと心理的ハードルが高い商品には明確な差があることは私たちも理解していたのですが、想像よりもオンラインでの販売にハードルを感じる機会が多々ありました。

販売チャネルを考える際には、市場のトレンドを捉えることも重要です。例えば、ZOZOTOWNなどのプラットフォームで靴を買う文化が定着すると、オンラインでサンダルを購入する消費者が大きく増加します。

今でこそサンダルはオンラインでも売れ筋の商品ですが、販売開始当時は私たちの認知が低かったこともあり、オンラインで履き物を購入することの消費者からの抵抗感は想像より大きかったことが印象に残っています。

この経験を通じて、販売チャネルと商品の相性を見極めることの難しさと重要性を改めて実感しました。

 

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古家 広大

古家 広大

早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。

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