#ブランディング
「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニー株式会社。2014年7月創業から急成長を遂げ、2019年9月末時点で顧客数47万人、グループ従業員数も2,700名を超え、DIMENSIONも含めた投資家から42.2億円のシリーズC資金調達も発表した。そんな同社・代表取締役の慎泰俊氏に起業家の素養、ビジョンなどについて聞いた(全6話)
テクノロジーでマイクロファイナンスを変革する
ーー御社の今後のチャレンジについてお聞かせください。
私たちが目指していることはシンプルで、金融サービスを「便利にする」ことと「安くすること」の2つです。
「安くする」ことにフォーカスしてお話しすると、マイクロファイナンスの世界では、調達してきたお金に対して10〜20%が金融サービスコストとして上乗せされてユーザーに融資されています。
このコストを低くしていくことが我々の一つのチャレンジとなります。
ーー具体的にどのようにコストを低くしていくのでしょうか?
金融サービスのコスト構造は「お金を集めるコスト」「お金を貸すコスト」に分けられます。後者は言い換えるなら「与信コスト」です。
まず「お金を集めるコスト」から説明すると、1つの国で資金を集める際は、理論的にはその国の国債金利より少し高いくらいの水準で借入ができたら最高でしょう。借入金利は基本的に国リスクと個社リスクから成り立っています。
我々は複数ヶ国でサービスを展開しているので、理論的にはこれらのリスクを分散できるため、「お金を集めるコスト」を下げていくことができます。
「お金を貸すコスト」に関しては、ビジネスを工程で分けると、お客様のデータを集め、審査し、金融サービスを提供する過程で、ここにかかるコストのほとんどが人件費です。
テクノロジーを活用して人件費を安くしていくわけですが、マイクロファイナンスの場合、お客様のうちスマホを使っているのは10%以下、インターネットが繋がっていない人も3〜4割程度、字が読めない人も2割程度います。このため普通のやり方では、どうしても人が介在しないといけない労働集約型ビジネスなのです。
我々は、テクノロジー・データサイエンスの力でビジネスモデルを変革しようとしています。
例えばお客様のデータ集めに関しては、スマートフォンなどのデバイスを通じて家計簿をつけていただくなど、情報が自然に集まる仕組みを作ろうとしています。この情報を、データサイエンスの力で自動的に査定し、融資判断を行います。そして貸出・返済の工程ではキャッシュレス化を進めています。
これまで2019年9月末時点の顧客数は47万人、グループ全体の従業員数は2,700名を超え、多国展開のオペレーションを構築してきました。ここに、然るべきタイミングでテクノロジーを導入し、マイクロファイナンスのコスト構造を変革していきます。
そうすることで、「民間版の世界銀行」として、より便利で安価な金融アクセスを、世界中の途上国の方々に提供していきたいと思っています。
新しい世界を作るのは苦しい。そして楽しい。
ーー途上国47万人もの「金融データ」からは、未開拓の大きなビジネスチャンスがさらに広がっていそうです。
アント・フィナンシャル(中国アリババグループの金融会社。Alipayなどを運用。)を見ていると、その動きは圧倒的です。彼らはデータを集めるためだけに1万人の社員を新規で採用したと言われています。
金融サービスを運用する中で生まれるお客様の「信用評価データ」は融資だけでなく、他サービスに転用できる大きな可能性を秘めています。例えば就職や買い物など、様々なサービスへの活用が考えられるでしょう。
このお客様の「信用評価データ」を活用した新しいプロダクトを使っていくことで、さらにお客様の生活を豊かにする。そしてそのプロダクトを通して得た収益をもとに、さらに金融サービスを安価にしてお客様に還元する。
そんな循環を生み出していきたいと思っています。
ーーでは最後に、ベンチャーナビの読者である起業家予備軍、若手起業家の方々にメッセージをお願いいたします。
起業したての人は、恐らく今はすごく苦しくて大変だと思います。
私は起業して丸5年、無事に会社を潰さずにやってきましたが、今も辛く、苦しいです。たぶん5年後も辛くて苦しいんだろうなと思っています。
でも、恐らく何か新しいものを作るということは苦しいことで、そのプロセスも含めて楽しんで、自分が信じることや作りたい世界を作ることのために働くことが幸せなんじゃないかと思っています。
これからも一緒に頑張っていきましょう。
■読者のみなさんへのメッセージ
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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