#インタビュー
「無駄をなくしたスマートな社会の実現」を目指し、あらゆる領域の企業に対してソフトウェアの品質保証・テストを提供する株式会社SHIFT。2019年度「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」において新興市場部門第1位の優良企業に選出されるなど、投資のプロからも注目を集める急成長企業だ。そんな同社を牽引する丹下大 代表取締役社長に、起業家にとって重要な素養、成長事業の創り方などについて聞いた(全5話)
後天的努力で「シナプス」を増やす
ーー丹下さんはご自身の経営者としての素養、強みをどのようにして養われてこられたのでしょうか?
まず事業を描く「論理的思考力」。これは後天的に鍛えられます。
私の場合、20代の頃に働いていた会社(株式会社インクス。現SOLIZE株式会社)の創業社長である山田眞次郎さんが、業界でも有名な頭の回転の早い人でした。
なので、彼にプレゼンする直前は他のタスクをすべてやめ、プレゼン用のパワーポイントを作りながら「この色使い、フォントで、この文字を出すとここでこう反応するだろう」といったシミュレーションを何度も繰り返していました。
「なぜ社長はそのように考えるのだろう」「どうやったら彼を誘導できるだろう」という思考訓練を繰り返していると、次第に社長の思考や動きが手に取るように読めるようになり、自分の論理的思考能力が形成されていったのです。
ーーベンチマークとなる人の思考に想像力を働かせ、論理的思考力を鍛えられたのですね。
論理的思考力は訓練の賜物です。
たとえば、「8×7は?」と聞かれて、「8+8+8+8+…」と考えたりしないですよね。これは「このインプット(問い)に対して、どういうアーキテクチャー(掛け算)で答えるか」というシナプスができているからです。
掛け算がアーキテクチャーの一つだとしたら、私は訓練により何百パターンもの自分なりのアーキテクチャーを作っています。掛け算と同じように、それは訓練で身につくものです。
ーー御社は採用においても「年齢、国籍、性別を問わない」と掲げられています。努力をすれば誰でも力が身につくと、ご自身が確信しているからとも言えそうです。
人によって成長速度は異なります。学生の頃から要領のいい人もいれば、大人になってから急成長しだす人もいる。
ですので、年齢という断面で評価することはしません。性別も国籍も、前職ですらも気にしません。やる気があれば、誰でも成長することができると信じています。
大きなビジョンを「鮮明」に描く
ーー大きな組織を率いる上で、意識されているポイントがあればお聞かせください。
意識しているのは「少し先の未来」を描いてあげるということです。
起業家はよく「遠い未来」を描き、世の中がどう変わるかをビジョナリーに語ることが求められますが、実はそれだけを言うのはとても簡単なことです。でも現場社員からすると遠い未来すぎて、やる気は上がりません。
なので大きなビジョンを「少し先の未来」にブレイクダウンしたものとセットにして伝えるようにしています。
ーーたしかに、起業家は「大きなビジョンを描く」ことばかりに注目がいきがちです。
これも前職のサラリーマン時代で学んだことですね。
社長が非常にビジョナリーな人だったのですが、現場からすると「夢もいいけれど、目の前の仕事はどうなるんだ」という気持ちにもなりますよね。
弊社の場合、「無駄をなくしたスマートな社会の実現」を掲げ、ひずみの大きいIT業界の課題を解決する事業を展開しています。そして、日々の業務や戦略がどうビジョンに結びついているのかを、細かに社員に情報共有するようにしています。
私はよく周りの経営者に「ビジョンを鮮明に描ける人だ」と言われます。それは、大きなビジョンから「少し先の未来」までを全て具体的に、鮮明に、みんながワクワクできるように描いているからだと思います。
ーー具体的に、「少し先の未来」といった丹下さんの考えをどのように組織に浸透させていっていますか?
社内ブログなどで発信していますが、私は決して人前で話すのが好きなタイプではないので発信数は多くありません。しかし1つ1つのメッセージを、みんなの心の底に響くように作り上げることを意識しています。
また、役員会議の内容は録音してテキスト化し、要約して配信するようにもしています。
意識伝播の手法は起業家のタイプによって合う・合わないがあるでしょう。そういった手法よりも、メンバーの心が動くメッセージを練り上げる力の方がずっと大切だと思います。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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