#人事・組織
管理部門と会計・法律分野に特化した人材紹介の先駆けとして1990年の創業以来、士業や企業管理部門に特化した転職・採用支援のマーケットリーダーとして業界を牽引し続ける株式会社MS-Japan。近年はITを活用したプラットフォーム事業を急成長させるなど、新たな価値創造を続けている。そんな同社の代表取締役社長 有本隆浩氏に、起業家にとって重要な素養、高収益事業の創り方などについて聞いた(全6話)
「経営の3原則」を見失うな
ーー有本さんが考える、起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?
前提として絶対的に必要なのは「志」。自分がやりたいことを明確に持っていない人は起業しないほうがいい。
「志」を持っていることを前提とした上で、私が会社を経営する上で大切にしている「経営の3原則」があります。
一つは「最小経費で最大利益を生むこと」、二つ目は「値決めは経営」、三つ目が「付加価値の創出」です。当たり前のことのようだけれど、これがなかなか出来ない。収益をきちんとあげる会社を経営するには、避けて通れない原理原則なのです。
有本隆浩/1961年生まれ 大阪で商売を営む実家に生まれ育ち、幼い頃から将来の事業家の夢をみる。大学卒業後、株式会社リクルートに入社。多数の経営トップに対し、企業の将来あるべき姿を明確にし、未来ビジョン構築と求める人材採用の提案活動に従事。1990年に株式会社日本MSセンター(現社名:株式会社MS-Japan)を設立。世にないニッチトップ事業を展開し、2016年12月に東京証券取引所マザーズ上場、2017年12月に東証一部へ市場変更を果たす。
ーー近年のスタートアップは資金調達環境が良いこともあいまって、先行投資という名目で大きく赤字を掘り、事業グロースを目指すことが美化されている傾向もあります。「最小経費で最大利益を生むこと」という原則が、少し軽んじられているのかもしれません。
私もスタートアップのピッチイベント審査員などをやったりしますが、資金調達が目的になり、実現不可能な事業計画ばかりをアピールする経営者が多く見受けられます。つまり「事業経営」ではなく、「投資」ばかりに憧れて本末転倒になっている。経営の本質から外れてしまっているのです。
経営の本質は「最小経費で最大利益を生むこと」にあります。
お金もないのに、自分のキャパシティ以上のものを買ってばかりいては、当然ながら赤字になる。経費を最小限に抑えながら、原価に付加価値を付け加えることで利益を生み、お客様も幸せにする。
この「経営の本質」を愚直にやりきれるかどうかで、高収益企業が作れるかどうかが決まります。
「値決めは経営」。絶対に譲らない覚悟を持て
ーー「値決めは経営」という原則も、「最大利益を生む」原則と関連していますね。
経営者は自分が作った商品に自分で値段を決めなくてはいけません。当然ながらこの「値決め」が、収益に大きく影響します。
では、理想的な「値決め」が何かと言うと、その商品の「適正価格帯」を瞬時に見極め、市場で売れる「上限価格」で売る、ということです。この値決め力が経営力そのものといっても過言ではありません。
よく量販店などが倒産に追い込まれるパターンとして「値引き合戦」があります。他店との安値競争ばかりして「安かろう悪かろう」のスパイラルに追い込まれ、企業が疲弊し、最終的に利益が出なくなるパターンです。
「値引き」は、経営において最も安易な衰退行為です。近江商人の商売の十訓にも「正札を守れ。値引きはかえって疑いを招くのでするな」とあります。ユダヤの商法でも「値引き行為は商品に自信が無い表れ。最低な行為だ。」と断罪されています。
私はビジネスで1度たりとも値引きをしたことがありません。この「値決めは経営」に対する覚悟が、高収益企業を創る経営者には必須条件です。
ーーとはいえ、若い起業家や、まだ事業がスタートしたばかりの起業家にとっては、どうしても値決め交渉が難しいことが多いと思います。
ここで3つめの原則、「付加価値の創出」が必要となります。値段に見合った付加価値をお客様に提供するということです。
たしかに創業したては提供できる付加価値が小さく、適正価格も低くならざるを得ない場合もあるでしょう。しかし安易に値引きに逃げないこと。付加価値さえ創出していれば、お客様は必ず向こうから寄ってきてくれます。
言い換えるなら「わらしべ長者」です。最初の1本のわらしべだけでは、なんの価値も無いように見えます。でも、それを誰かが「どうしても欲しい」ものに変える創造力を持つ。これが「付加価値の創出」です。
当社の場合、提供商品はどんどん値上げしていっています。それは決して当社の都合ではなく、提供できる付加価値が上がってきているからです。付加価値に見合った分の値上げは、「値決めは経営」なので当然しなくてはいけません。
「付加価値の創出」をし、「値決めは経営」の拘りを譲らず、「最小経費で最大利益を生む」。この3原則が経営の本質であり、当社が経常利益率45%以上の業界内ダントツ高収益企業たり得ている秘訣なのです。
>第2話「「経営者になるには経営者から学べ」 伝説的営業マンMS-Japan 有本隆浩社長を生んだ原体験とは」に続く
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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