#起業家の素養
国内最大級のタクシー配車サービス「JapanTaxi」など、タクシー業界のIT化を次々と推し進めるJapanTaxi株式会社。同社代表取締役社長の川鍋一郎氏はタクシー業界最大手「日本交通」の3代目として会長も務める。川鍋氏に起業家の素養や事業立ち上げのポイントなどについて聞いた(全6話)
「産業ドリブン」で事業を構想する
――新規事業の立ち上げについてお聞かせください。事業のアイディアはどのようにして考えておられますか?
事業アイディアを見つけようと努力したことはありません。自分がエキスパートである産業について深く考え続けていると、やりたいことはいくらでも出てくるものです。
特にIT業界で見られがちなのが「テクノロジードリブン」なビジネスの考え方。AIやブロックチェーンといった最新テクノロジーをどのように使うか、という切り口だけでは大きな事業構想は生まれてきません。
むしろ「産業ドリブン」で、産業の課題を見ていけば必ず事業アイディアは生まれてきます。当然ながらITテクノロジーを活用すれば改善できる課題はたくさんあるでしょう。
なので自分が立脚する産業の課題について深く考えることが、事業アイディアを生むポイントだと思います。
――新規事業のGo/No goの判断はどのようになされていますか?
まず弊社の場合は「タクシー」に事業領域を絞っています。
例えば弊社が販売しているドライブレコーダーをバス会社から買いたいと言われてもすべてお断りしています。事業領域を絞ることでリソースを分散させずに事業推進できると考えているからです。
残りの判断軸は事業を実行する「人」に対する信頼です。
正直、新規事業が成功するかどうかはやってみないとわかりません。だからこそ、事業を任せるリーダーが信頼できるかどうかが一番の判断軸になります。
信頼するかどうかは、先ほど(第2話リンク)も言ったように、日々の「結果」がすべてです。過去に「結果」を積み重ねてきた「人」に賭けるのが最も確率の高い判断方法だと考えています。
覚悟を持って先陣を切る
――事業参入タイミングの見極めについて、何か工夫されていることはありますか?
まず「やってみる」こと。事業参入のタイミングは考えているだけではわかりません。一度始めれば、そのタイミングが適切かどうかの見極めは数ヶ月でできます。
例えばIRIS(JapanTaxiと株式会社フリークアウトの合弁会社として2016年設立)でやっているタクシー車内広告事業は開始してすぐに手応えを感じ、この2年くらいで急激に事業として立ち上がりました。
成功の背景には、通信速度の高速化やタブレット・SIMの低価格化など、テレビクオリティの動画広告が容易に出稿できる外的環境が整ったことが考えられます。しかし、このタイミングは我々が意図したものではなく、やってみて初めてわかったことです。
また、もし「参入が早すぎた」と気づいた場合でも、本当に将来的な可能性や社会的意義があるのであれば、損が出ない程度の小さな体制で継続することも大切です。
タクシー車内広告の取り組みは、私たちは以前から長年試行錯誤し続けていました。その蓄積があったからこそ、ここ2、3年の市場成長タイミングに乗ることができたのです。同様に、子供一人でも安心してタクシーに乗せられる「キッズタクシー」は、事業規模は小さくても社会的意義がある事業なので8年続けています。
ネット企業は「儲からないからすぐに撤退して次」とピボットすることが美徳とされている節がありますが、その繰り返しでは新しい市場を創ることはできません。
市場がいつ立ち上がるかなんて誰にもわからない中で先陣を切るためには、とにかく考える前に「やってみる」こと。そしてタイミングが来るまで粘り強く続ける「覚悟」が求められます。
――御社はタクシー配車サービスもかなり前から提供されています。
配車アプリ「JapanTaxi」は2011年から8年続けていますので、どの競合よりも先に参入しています。早く参入して時間を使えたことが、現在の競合優位性につながっています。
最初の頃は誰も見向きもしないし、儲からない状況が続くかもしれません。
そんな状況を乗り越え、タイミングが来るまで辛抱強く続ける「覚悟」が、市場の先陣を切る会社には必要だと思います。
>第4話「「マインド」が長い仕事人生を豊かにしてくれる」に続く
>第2話「タクシー業界全体を突き動かすリーダーの行動術」に戻る
>JapanTaxiの採用情報はこちら
>JapanTaxiの公式HPはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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