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“おせっかいなプラットフォーム”食べチョク急成長の舞台裏 ビビッドガーデン 秋元里奈社長(第2話)

「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」をビジョンに掲げ、一次産業の生産者が、個人に直接商品を販売できる産直通販サイト「食べチョク」を提供している株式会社ビビッドガーデン。累計資金調達額は8億円を超え、テレビ東京「日経スペシャル カンブリア宮殿」にも取り上げられた。同社の代表取締役社長の秋元里奈氏に、起業家の素養や事業成長の秘訣などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた(全4話)

“食べチョク流”プラットフォームの存在意義

ーープラットフォーム事業立ち上げのポイントについてお聞かせください。

プラットフォームサービスの難しい部分は「バランス感」だと思っています。

買い手に寄り過ぎても売り手に寄り過ぎてもいけない。そしてその「バランス感」が事業フェーズによって変わる。この見極めが非常に難しいのです。

例えば私達の場合、創業初期は生産者さん(売り手)集めが大変でした。ただし、生産者さんは課題が明確なので、一定の規模を超えたあとは営業しなくても口コミで出品問い合わせが増えていきました。そうすると、今度は消費者さん(買い手)集めに課題が出てきます。

プラットフォームサービスの運営はこの「バランス」を行ったり来たりするわけですが、自分たちのプラットフォームに合ったベストの立ち位置がどこなのかを常に見定めるのが重要です。いわゆる「プラットフォームのお作法」を自己流にカスタマイズしていくのです。

 

ーー食べチョクならではのカスタマイズはどのあたりにあるのでしょうか?

例えば私たちの場合、生産者さんと消費者さんの間で大きなギャップがあります。

多くの生産者さんは「手紙を商品と一緒に梱包したら喜ばれる」といったことも最初はわからないところからスタートしますが、消費者さんはいろんな通販サービスを既に使っていて、綺麗な梱包のECに慣れている。ここに大きなギャップが存在しているわけです。

なので私たちはこの「ギャップを埋める」ことこそがプラットフォームの仕事だと定義しました。

例えば、よくあるプラットフォームはトラブル発生時に「両者で解決してください」というスタンスをとることが多いと思うのですが、我々はトラブル発生時に必ず間に入るようにしています。

また、生産者さんの出品後のフォローにもかなり力を入れています。「商品名を何にしたらいいか」「写真をどう撮ったらいいか」といったフォローにかなりのリソースを割いて対応しているのです。

私たちはこれを「おせっかいなプラットフォーム」と表現したりするのですが、食べチョクだからこそ必要とされる価値なのかなと思っています。

 

ーー「バランス感」をどのようにして見極めているのでしょうか?

KPI設定を間違わないことが大事だと思います。

例えば私達は「登録生産者数」をKPIとして追いかけていません。なぜなら流通額に対して生産者数が過剰に増えると、生産者さんは頑張っているのに個々の売上が減っていくという事象が起きるからです。これでは「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」というビジョンを達成できません。

なので私たちは「生産者一人当たり売上」をKPIとして設定しています。たとえ生産者数が横ばいでも「生産者一人当たり売上」が伸びていけば、プラットフォームとしての流通額は伸びるという考え方です。

「プラットフォームの思想」に応じて、KPIをしっかり定めるのがバランスをとる上で重要なのかなと思います。

 

参入障壁としての“コミュニティづくり”

ーー般的にプラットフォームが成長すると、質が低下するといった弊害も生まれたりします。その点はどのように工夫されていますか?

2段階あって、1つは入口時点。登録タイミングで審査をさせていただいています。

価格競争が不当に起きないように、プロとして一次産業をやっている人しか登録できないようにしているのです。

2つめは登録後。例えば配送遅延発生状況などの項目に基準を設けていて、基準に満たない状態が続いて改善が見られない出品者は、途中で出品停止にするといった対応をしています。

また、生鮮食品を取り扱う以上、どうしても一定割合で配送途中で食材が傷むケースなどは発生してしまいます。私たちはそういったトラブルを隠すのではなく、あえて悪いレビューも消さずに、生産者さんのありのままの姿を見てもらえるよう意識しています。

すべてオープンにして生産者さんの真摯な対応を見せることができれば、逆に消費者さんに安心感を与えられると考えているのです。

 

 

ーー直近では秋元さんのメディア露出なども含めて、非常にブランディングに成功されている印象です。なにか意識されていることはありますか?

誰に、何を、どうやって届けるか。

当たり前のことなのですが、意外とこれをやりきれている会社は少ないです。この基本をしっかりやりきるということにブランディングは尽きるのではないかと思っています。

特にPRに関して大切にしていることを2つ挙げると、1つめは社長である私自身がアンテナ役として貢献することです。

特に創業初期の段階では世間の大きな流れやトレンドは社長に情報が集まります。世の変化を人より先に知れるのは社長なので、アンテナ役としての役割は社長がやるべきです。

2つめは、広報担当が常に会社内のすべての施策に対して目を張り巡らせることです。

施策運営をしている当人たちにとってはあまり新規性のないような見える取り組みでも、切り口を変えるだけで社会的・広報的バリューが出せる場合があります。

施策を実施することに手を一杯にするのではなく、社外に対して伝えるところまでを一気通貫でコミュニケーションできる体制を整えること。これも一般的に聞こえることですが、徹底することでPRの効果は大きく変わってくると思います。

 

ーーコミュニティづくりにも非常に積極的な印象です。コミュニティづくりをするにあたり、大切にしていることがあればお聞かせください。

数字上のKPIを直接的に追うというより、私たちの実現したい世界観をゆっくり伝播させたいと思って実施しています。

例えば「一次産業みらいラボ」というオンラインコミュニティや、Clubhouseを使って毎日生産者さんと話をする「農家漁師の井戸端会議 #食べチョクハウス」という取り組みをやっていますが、それらの活動の根幹にあるのは「生産者さんと消費者さんの距離を近くすることが生活を豊かにする」という食べチョクの世界観です。

同様にオフラインの活動も、定性的な目的設定をしてこそ続けられることだと思っています。

例えば、新型コロナウイルスの流行で今はできなくなってしまいましたが、「企業内マルシェ」という企画では大企業の社食や休憩スペースで長机一つ置いて、生産者さんのマルシェを実施していました。その際に私たちは一切お金をいただかず、その場を生産者さんに提供する役割に徹していました。

これを実施した際に定めた目的は2つあって、1つは食べチョクの認知を広める活動。もう1つはマルシェによって生産者さんと直接会話をすることです。

このように定性的な目的に振り切ったことが、企画を継続できた要因なのだと思います。

オンライン完結で出来ることは確かに定量的な効果は出やすいですが、逆に言うとそれは誰にでもできるということ。当たり前ですが競合他社もできるし、大企業が参入してきたら大きな資本を投下されてしまいます。

思想の伝播は、数字には表れないけれど参入障壁になる。その信念が、コミュニティづくりやオフライン施策を続ける上で大切だと思っています。

 

※インタビュー記事は2021年7月22日現在の内容です

 

>秋元 里奈 (著) 365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘はこちら

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Broducer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。楽天に勤務後、EdTechベンチャーの東京オフィス立ち上げに参画。法人向け事業の急成長に貢献。その後グロービスにて英語MBAプログラム Japan Accountのリーダーとして、個人向けマーケティングと事業開発を担当。現在DIでは国内のスタートアップへの投資・上場支援を行い、志高い起業家への経営支援を通じて日本経済の活性化に取り組む。週末を中心にビジネススクールで思考領域の講師も務める。

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