「食べチョク」の組織づくり“WOWを届ける”ビビッドガーデン 秋元里奈代表(第3話)

「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」をビジョンに掲げ、一次産業の生産者が、個人に直接商品を販売できる産直通販サイト「食べチョク」を提供している株式会社ビビッドガーデン。累計資金調達額は8億円を超え、テレビ東京「日経スペシャル カンブリア宮殿」にも取り上げられた。同社の代表取締役社長の秋元里奈氏に、起業家の素養や事業成長の秘訣などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた(全4話)

「創業10ヶ月間社長1人」から始まった

ーー組織に関して、意識されていることをお聞かせください。

組織づくりは「文化づくり」だと思っています。

私たちの行動指針に「WOWを届ける」というものがあります。要は期待値を超える行動をするということなのですが、お客さんに対してはもちろんのこと、社内に対してもWOWを褒め称え合う文化をつくっています。

例えば社内でよく使う言葉として「間に落ちているボールを拾う人を評価する」というものがあります。自分の与えられた領域だけを淡々とやるのではなく、周囲の期待値を超えて行動する。こういった価値観が根付いているからこそ、自然とボトムアップで施策が生まれるのです。

行動指針や評価制度などの仕組みは「文化づくり」をするため。この意識が組織づくりにおいて大切なことだと思っています。

 

ーーエンジニアの組織づくりについてお聞かせください。秋元さん自身はエンジニアではない中で、どのようにして組織をつくられていますか?

ビジネスサイドとエンジニアサイドでは文化も違いますし入社動機も違うので、評価制度なども切り分けて考えています。

例えば私達の場合、ビジネスサイドの人間はビジョン共感型のメンバーがすごく多いのですが、エンジニアサイドはビジョンへの共感は前提としてありつつも、「自己成長」や「優秀なチームでのプロダクト開発」という軸が強い傾向があります。

なので各メンバーが成長できているかをこまめに1on1でエンジニアのリーダーが確認する仕組みなどを設計しています。

 

ーーちなみに最初のエンジニアはどうやって見つけられたのでしょうか?

これは奇跡的な縁でして(笑)。

創業初期の頃は本当に採用に苦戦して、10ヶ月間は私1人でした。もちろん前職の知人などに声はかけていましたが、「難しそう」とフルコミットはしてくれなかったんです。なので、とにかく無料で登録できる求人サイトに片っ端から登録していました。
そこで応募してくれたのが一人目のエンジニアで、今はリードエンジニアとして活躍してくれている西尾です。彼は技術力が高いのはもちろんのこと、マインド面も素晴らしく、いつも会社の成長のために役割を臨機応変に変えて動いてくれています。

一人目で彼を採用できたのは奇跡に近いです。その後の事業成長や組織づくりに加え、エンジニア採用でも効果的だったのは彼を最初に採用できたことだと思っています。

 

ーー奇跡とはいえ、秋元さんの行動力から生まれた縁のようにも思います。

振り返ってみると、「とにかく網を張りまくった」のは良かったことだと思っています。創業初期は会社としての魅力がありませんから、行動量がとにかく重要です。

あとは最初に採用で「絶対に妥協しない」こと。

一人目が本当に大事なので、いかにここでいい人を採用するかに関しては決して妥協しませんでした。技術力の見極めに関しても、エンジニアの友達に業務委託で入ってもらって技術チェックをお願いしていました。

とにかく行動し、粘り強く、技術力とマインドを併せ持っている人を探し続けたのが良かったのかなと思います。

 

大企業連携は「飛び道具」

ーースタートアップが大企業連携をするにあたり、意識されていることがあればお聞かせください。

私はスタートアップの大企業との連携は「飛び道具」で、創業初期はあまりそれに頼らない方が良いと思っています。

「大企業連携」と聞くと一見すごく見える一方で、実際に事業数字に反映される連携はかなり稀です。なぜなら、連携は双方にとってメリットがないと成り立たないのに、特に創業初期のスタートアップでは大企業に対して十分なメリットが提供できないケースも多いからです。

自分の強みが明確に無い時にむやみに連携しても、パワーバランスが崩れるのでうまくいきません。

飛びつきたくなる気持ちもわかりますが、自分たちにまだ強みが無い段階ではぐっとこらえて、事業KPIを他社に依存しない構造づくりが大切だと思います。

また大企業連携のデメリットとして「色がつく」というのもあります。必ず連携する際には「不可逆性が成長の障壁にならないか」も確認しておくべきでしょう。

期待値をすり合わせ、連携の目的や意義、双方のメリットを最初の段階で腹を割って話し合う。そうしたプロセスをしっかり経ることによって、はじめて大企業連携を成功させることができるのだと思います。

 

※インタビュー記事は2021年7月22日現在の内容です

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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