#人事・組織
IDaaS(Identity as a Serviceの略称)を中心とするクラウドセキュリティサービスである「HENNGE One」を提供するHENNGE株式会社。1996年創業の老舗ながら、2019年に東証マザーズ上場を果たし、近年の働き方改革を追い風に急伸を続けているSaaS企業だ。同社の代表取締役社長兼CTOを務める小椋一宏氏に、起業家の素養や成長事業の創り方などについて聞いた。(全4話)
“多様な価値観”がイノベーションを生む
ーー起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?
まずは「自分とは異なる価値観を持つ集団に身を置いた体験」です。
その前提には、「新しい価値を生み出す=異なる価値観を持つ人同士をつなぐこと」だという考えがあります。
新しい価値を生み出すことが求められる起業家には、異なる価値観を持つ人同士をつなぐ力が必要になる。
そしてその力を獲得するためには、異なる価値観を持つ人・ステークホルダーに想像力を働かせる力、つまり「自分とは異なる価値観を持つ集団に身を置いた体験」が大切になってくるのです。
小椋 一宏(おぐら かずひろ)/1975年生まれ HENNGE株式会社 代表取締役社長兼CTO
一橋大学在学中の1996年に創業。一貫して技術部門のトップとして会社を牽引し、代表取締役社長とCTO(最高技術責任者)を兼任。2010年ごろからクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を立ち上げ。2019年10月には東証マザーズ市場上場を果たした。
ーーなぜ「新しい価値を生み出す=異なる価値観を持つ人同士をつなぐこと」と思われるようになったのでしょうか?
私は自分のことを得意分野があまりないタイプの経営者だと認識しているのですが、唯一変わった部分があるとすると、幼少期は海外に住んでいて日本に来たこと。あとはコンピューター好きの“理系オタク気質”な少年だったのに、文系学部しかない大学に入ったこと。
つまり「自分とは異なる価値観を持つ集団に身を置いた体験」に幼少期から触れてきました。
それらの経験を通して、自分とは全然違う価値観を持つ人たちが存在し得ることを理解しましたし、異なる価値観が混ざりあったときの苦労、そして創造力の大きさも知りました。
私が創業時から「全然違う価値観を持った人達と一緒に会社を作ろう」と考えた根源にはその原体験があり、その原体験こそが私の強みの1つだと思っています。
起業家は“アウトオブデート”されたら終了
ーー起業家にとって重要な素養、2つめを挙げるとすると何でしょうか?
自らの努力で問題を解決し、最終的に目標を達成する「自信」でしょうか。
起業というのは、勝利の方程式がまだ立っていないところで試行錯誤を続け、自分なりの方程式を編み出す必要があります。誰かがすでに上手くやっているような領域で、人の真似だけをしていては勝てません。
この過程では当然ながら困難が数多くあるわけなので、試行錯誤を続けていれば答えが見つかるはずだという「自信」が持てるかが大切です。
私の場合は月並みではありますが、先ほどの「自分とは異なる価値観を持つ集団に身を置いた体験」をなんとか乗り越えたこと、勉強などで頑張って結果を出したことなどが積み重なって「自信」を得たように思います。
ーー起業家として重要な素養、3つめはいかがでしょうか?
「学び続けること」です。
起業とは、世界が変わっていくタイミングで、その“変化”から生まれたギャップを見つけ、そこに対して解決策を自ら作り出すことです。つまり起業にはギャップを発見する力が必要不可欠なのです。
ではギャップを発見するためにはどうすればいいかと言うと、ひたすら最新の状況に自分をアップデートし続け、他の人が気づいてないギャップに気づく力を身につけるほかありません。
アウトオブデート(時代遅れ)してしまったら、起業家としての役割は終わり。それくらいの覚悟で学び続けることが大切です。
また、ここでも多様な学び、つまり「多次元の学び」が大切です。
自分の得意分野が一つしかなかったら、物事を多次元的に見ることができず、新しい価値を生み出すことはできません。
学ぶ分野は多方面にあったほうがいいし、さらには時代の変化によって要らなくなる分野が出てくることも見越して、学ぶ分野を増やし続けたほうが良い。日々新しいことを吸収し、常に「毎日素人」であり続ける習慣が大切だと思っています。
起業家には常に「新しい学びの次元を増やす活動」と、「今すでにある学びの次元をさらに伸ばす活動」を続けることが求められるのではないでしょうか。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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