#インタビュー
アーティストやアイドルによるコンテンツ配信が無料で視聴でき、誰でもすぐに生配信が可能な"夢を叶える"ライブ配信プラットフォーム『SHOWROOM』。急成長する同サービスの運営会社SHOWROOMの代表取締役社長・前田裕二氏に、起業家としての心得や事業戦略について聞いた。(全6話)
世界中の格差を均等化するのがSHOWROOMのミッション
――日系企業の海外展開、海外についてはどんな想いがありますか?
想いベースでいうと、日本発の世界一の企業になるというのは思い続けています。これはSHOWROOMとしてやらなければならないミッションという単位でもそうだし、SHOWROOMの事業理念も「世界中の格差をエンタメの力で均等化したい」という価値観に立脚しているので。
そして僕自身としても、小さい頃にいろんな逆境があった中で、どうやってその逆境、あるいは、一見逆境と見えることに対して、それをどうjustifyするかと考え続けてきました。あれは不幸なのではなくて、僕が世界を変えるために、マストで体験しておかないといけないことだったんだと、これは自分のミッションなんだと、正当化したいんですよね。自分で運命の正当化の旅をしてる。
そうした運命の正当化をするためには、僕らはやっぱり明確に、それは僕自身のエゴになっちゃうかもしれないですけど、世界一を取りたい。
SHOWROOMは、日本のライブストリーミング界でこそ、今の規模のプレゼンスを作れていますが、その先には、やっぱり世界一を取りたいですよね。
時価総額、マーケットキャップで語るのは拝金主義的で良くないよねって指摘を時折受けることもあるんですけど、それでもなお、僕らは資本主義社会に生きている中で、やっぱりマーケットキャップって大事だと思っていて。時価総額トップ企業を上から並べると、日本勢の姿が見えないっていうのは、純粋に悔しいです。生まれてから今まで、僕を育ててくれた日本、こんなに好きな日本が、ここまでボロ負けしているのは、心底、悔しいなって思う。その悔しさや苦しさをバネに、絶対に勝ってやると。強く、思っています。
心の底から信頼できるローカルパートナーとの協業が鍵
――その上で課題になると考えていることはありますか?
課題として感じていることは、3つあります。
1つはパートナー探しですね。中国とかアジアは特にそうなんですけど、誰もかれもが嘘をついてるんじゃないかみたいに疑心暗鬼になっちゃうというか、性悪説に立って仕事をしなくちゃいけないみたいなところがあるかと思います。本当に信頼できるローカルパートナーを見つけるのが難しい。一見良さそうな人はたくさんいるんだけれども、どのタイミングで、信頼の太鼓判が押せるのか。ここが課題だと思ってます。
2つめに、外資規制がある国は本当に難しいと思っています。また中国の話になりますが、FacebookやGoogleが排除されている現状を見ても、結局、中国で勝てるかどうかはかなりそこに依存してると思っていまして。外資規制の壁を超えて、それでも中国で成功するためには、多分1点目の優良なローカルパートナーを見つけて組むことが重要になるだろうと思ってます。
3つめには、意外な観点かもしれないんですけど、「宗教」が難しいと思ってます。例えばインドネシアでライブストリーミングプラットフォームを作ってマーケティングをしたいって相談をある人にした時に、「牧師さんを使うべきだ」って言われて。「牧師さんがインフルエンサーなんだ」と。何気にSNSで500万人くらいフォロワーがいたりして、インフルエンサーとして、自分の話した経典の中身をテープとかで売っていたりするんだよと言われて、え、そんな感じなんだ笑、と衝撃を受けました。
一方では、一緒にミーティングをしていた人が歩いていてツバを吐くから「何をしてるの?」って聞いたら、「ラマダンが始まったからだ」と。敬虔なムスリムの人ってツバも飲まないんですね、ラマダン中って。感覚がわからん、と。ユーザーと同じ肌の温度になれないマーケットで、本当に勝てるのか。宗教の違いが人の思考・行動様式の違いを大きくもたらす中で、無宗教国家の我々からすると、海外においては十分に想像力を働かせられない部分が多いことに課題を感じています。
ビジネスは結局「思いやり」を持った人が勝つ
結局、サービスの作り方のコツも、チームビルディングの話も一緒で、相手方に対してどれだけ想像力を持てるかだと思ってるんですよ。結論としては、結局精神論みたいになってしまって申し訳ないのですが、世の中は思いやりが全てだと思ってるんです。自分が相手だったら何が気持ちいいかなって考えるのは社内もそうだし、社外もそう。もちろんユーザーに対してもそうだし、多分恋愛においてもそう。人間関係はだいたいそうで。
だからITってテクノロジーっぽく見えて、実は人間の思いやりみたいな泥臭い、あったかい部分が一番重要な、極めて人間臭い事業分野だと思っています。だからこそ人間的に色々な経験をしている人が価値がある。テクノロジーがどうとかじゃないんです。
再現性高くITサービスを作って勝てる人っていうのは、他者への想像力とか思いやりのある人だろうなって思います。
その点、日本人こそ、そこは勝たなきゃダメでしょって思ってるんですよね。こんなにサービスに優れた国はどこにもないし。一歩先に回って相手の考えを予測して手を差し伸べてあげる文化って、世界的にも本当に誇れるものですから。
だから、結局ローカルパートナー探しの話に戻るんですけど、ローカルなユーザーへの想像力を持てる、信頼できるパートナーを見つけられれば、海外展開もきっとうまくやれると思ってます。
>第6話「すべては人生のコンパスを見つけるところから」に続く
>第4話「成長の本質は鉱脈の見極めにあり」に戻る
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著者 小縣 拓馬
起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。 ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~
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