株式会社GA technologies 樋口 龍社長が語る 「『リアル×テック』による競合優位性」(第2話)

「世界のトップ企業を創る。」というビジョンと共に、不動産業界にテクノロジーを取り入れ、イノベーションをもたらしてきた株式会社GA technologies。2018年の上場当時以来2度目の対談となる今回は、同社 代表取締役 社長執行役員 CEO 樋口 龍氏に、起業家に必要な素養や事業拡大とM&Aのポイント、今後の展望について、DIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)

Amazonが手を出せない「ネット×リアル」の空白地帯

ーー不動産業界は、取引単価の高さや複雑な法律、さらには融資や保険といった第三者の関与があるため、DXを目指すスタートアップ企業が生まれにくい領域だったと認識しています。そのような環境下で、不動産テック企業として創業され、わずか12年で業界売上高トップ15にランクインするまでに成長された要因はどこにあるのでしょうか。

実は、「不動産会社に勤める中で不動産テックのアイデアが生まれた」わけではなく、24歳でキャリアをスタートした瞬間から、「テクノロジー、ITでビジネスをやりたい」と漠然と考えていたことが起業の原点です。

それまでサッカー一筋で、ほとんど勉強をしてこなかった私ですが、親の教えで本だけは熱心に読みました。サッカーを辞め、次の人生を考えたときに出会ったのが、『志高く 孫正義正伝』です。

「サッカーで世界的な選手にはなれなくても、ビジネスで世界を目指せる」「インターネットの情報革命が起こっている今、挑戦したい」と感じ、それが私の原動力となりました。

そのため、就職活動の軸も「テクノロジーを使って大きなことを成し遂げる」という一点に絞っていました。

私は文系で学歴もなかったので、需要と単価が高く、専門知識が必要である不動産業界が基礎的なビジネス力を身につけるために良い環境だと判断し、この業界に飛び込みました。

2013年頃からクロステックが台頭し始め、農業や教育といったレガシーな分野もテクノロジーによって変革されていく中で、「このアナログな不動産業界も必ず変わる」という確信のもとに不動産テックで起業しました。

しかし、当初は良いアイデアに恵まれず、新規事業で3回ほど失敗を経験しました。

その際、Y Combinatorのポール・グレアム氏の記事を読み、「新規事業の失敗はニーズがないためである。プロダクトアウトではなくマーケットインで考えるべき」だと気づきました。

そこで、不動産営業として5〜6年働いた現場経験を振り返り、非効率な部分や顧客がより幸せになれる方法を考えた結果、宝のようなアイデアが豊富にあることに気づきました。

失敗した事業は「何か良いネタはないか」というプロダクトアウトの発想でしたが、現在のサービス『RENOSY』は、現場のニーズから考えたマーケットインの発想によって生まれたものです。

この「テクノロジー」と「現場のニーズ」の融合こそが、当社の競合優位性の源泉となっています。

GAFAMのような巨大企業は、桁違いの時価総額と利益を誇り、「デジタル完結」のサービスを得意としています。

しかし、例えばAmazonがあらゆる商品を扱っているにもかかわらず、AIが進化した今でも扱っていないものが2つあります。それが「不動産」と「会社」です。

Amazonと相性が良いのは、シャンプーのように低価格で均一な、どこで買っても同じ商品です。

一方、不動産と会社はその真逆であり、高額且つ一つとして同じものがありません。デジタル上で効率的に比較できたとしても、最終的には「直接見たい」「人に聞きたい」というプロセスが必ず残るのです。

私たちは、この特性を活かして「ネット×リアル」のアプローチを大切にしています。

この領域はオペレーションが煩雑で手間がかかるため、GAFAMやアリババ、テンセントといった巨大テック企業も参入を避けている。つまり、未だに空白地帯なのです。

「テクノロジーを活用しつつ、実際のオペレーションも担う」ことで、日本から世界市場を目指すことは十分に可能です。この信念のもと、私たちは今も邁進しています。

 

参入障壁の高さと蓄積したデータによる競合優位性

ーー成功しているビジネスモデルには、必ず後発の模倣企業が現れるものかと思います。国内で類似事業を展開する企業に対して、御社はどのようにして競合優位性を確立しているのでしょうか。

不動産テックにおける事業立ち上げのパターンは、「テック企業が不動産領域に進出する」「既存の不動産会社がテックを取り込む」「ゼロからリアルとテックを統合して立ち上げる」の3つに大別されます。

各パターンの状況として、まずテック企業が不動産領域に進出することは、宅建業法などの法規制への対応や、プロフェッショナルな実務オペレーションの構築が極めて複雑であるため、事業化の選択肢に上がりにくいのが現状です。

また、既存の不動産会社がデジタル化することも容易ではありません。多数の店舗といった既存のハード(設備や組織)をすでに構築しているため、一気にデジタル化へ舵を切ることが難しいのです。

そして新規立ち上げについては、現在の市場環境ではスタートアップの大部分がBtoBのSaaS企業です。

BtoCサービスは広告宣伝費などを含め膨大な資金が必要となる一方で、ベンチャーキャピタルも投資のハードルが高いため、BtoCプレイヤー自体が少ない傾向にあります。

そんな中で当社の優位性ですが、当社は短期間で一定の事業規模を築いており、今から追随するには莫大なマーケティング投資とテクノロジー投資が必要になります。

また、当社の最大の強みは、Amazonと同様に「どのような顧客が、どの物件を購入したか」という成約データの蓄積です。

このデータを物件選定や顧客対応に活用し、その結果がさらにデータとして蓄積される循環が構築されています。

このAIを活用したデータの蓄積こそが大きな競合優位性となっており、参入障壁は非常に高いと自負しています。

 

 

ーー御社は、不動産による資産形成を身近なものにするマーケットプレイス事業『RENOSY』に加え、不動産取引を効率化するSaaS事業『ITANDI』も展開されています。そこでの強みについても教えていただけますか。

我々が展開する『ITANDI』は、特定の業界に特化したVertical SaaSであり、非常に可能性を秘めた領域です。

一般的な会計や人事システムがバックオフィス業務を支えるのに対し、我々のプロダクトはユーザーである不動産会社の売上に直結します。

だからこそ、お客様のビジネスに対する深い理解が不可欠です。我々グループ自身が『RENOSY』を通じて約4万5千室の物件を管理しており、管理には『ITANDI』を活用しています。

「自分たちが最大のユーザーである」という事実が、深い理解を支える大きな強みとなっています。

 

ーー自社で物件管理まで行っているからこそ、お客様の「痒いところに手が届く」プロダクトを作ることが出来るんですね。

おっしゃる通りです。以前、「自社で不動産管理を行いながら、競合他社に管理システムを販売するのは利害衝突(コンフリクト)ではないか」とご指摘いただいたこともあります。

しかし、Amazonが自社のECのために開発したAWSを世界展開しているように、最終的に「お客様がどのサービスを選ぶか」が最も重要だと考えています。

現場を熟知しているからこそ提供できる圧倒的に使いやすいサービスを構築し、お客様に選んでいただく。これこそが、私たちが正しいと考える経営姿勢です。

 

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古家 広大

古家 広大

早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。

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