#起業家の素養
飲食店に関わる各事業者等を繋ぐ「飲食店.COM」を中心とし、飲食業支援プラットフォームを幅広く展開する株式会社シンクロ・フード。2003年の創業以来、15期連続での増収増益を達成し、営業利益率も40%を超える高収益企業へと成長。2016年9月には東証マザーズ上場、2017年9月には東証1部へ市場変更も果たした。そんな同社代表取締役の藤代真一氏に、高収益事業を生み出すポイントや起業家の素養などについて聞いた。(全4話)
起業を志すきっかけとなった「父の言葉」
――まずはじめに、元々アクセンチュアで働かれていた藤代さんが「飲食店支援」を軸に起業されたきっかけをお教えください。
「起業しよう」とは幼い頃からずっと思っていました。父親が青果店の卸を経営していて、小さい頃から「自分のレールは自分でひけ」と言われてきました。なので自然と「いつかは起業する」という意識は持っていました。
大学院では化学の研究をし、卒業後はコンサルティング会社のアクセンチュアに就職しましたが、入社時から起業すると決めていました。アクセンチュアでの仕事も非常にチャレンジングだったのですが、30歳を迎えたタイミングで一つの節目だと思い起業しました。
藤代 真一/1973年神奈川生まれ。1999年に東京工業大学大学院を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。IT部門でエンジニアとして従事し、29歳で退職。「飲食業界に関わる人々をつなぎ、幸せにしていきたい」という想いで、2003年4月に株式会社シンクロ・フードを設立。代表取締役社長として、同社を牽引。
――化学専攻からコンサルティング会社のアクセンチュアを就職先に選んだのは、「起業」を意識されていたからでしょうか?
恥ずかしながら深くは考えていなくて。(笑)
ただ、化学の道で研究者になったとしても起業するのは難しいとは感じていました。「経営コンサルティング」という職業を大学の就職ガイダンスで見かけて、ここにいけば経営を学べるかもしれないと思ったのが入社のきっかけです。
――実際入社されてみていかがでしたでしょうか?
ITエンジニアだったので、経営の力はまったく身につかなかったですね。(笑)
ですが、「テクノロジー」を軸にビジネスモデルを構築していく技術はアクセンチュア時代に培ったものです。また、業務プロセスを全体俯瞰した上で、「システムがやるべきことと人がやるべきこと」を常に整理する意識は、まさにアクセンチュアで培った思考です。
「原体験」の掛け合わせで生まれた創業事業
――起業する最初の事業はどのように着想されたのでしょうか?
実はアクセンチュアを辞めたときは、具体的に何で起業するか決めておらず、退職後1年近く起業のアイディアを考え続ける日々が続きました。
そんなある日、ふと気づいたんです。「自分の強みである『テクノロジー』と、育ってきた環境である『食』を掛け合わせれば面白いビジネスができる」、と。幼少期に父親が営業先となる「新規の飲食店探し」に苦労する姿を見ていたので、新規で飲食店を立ち上げる人と、そこにサービスを提供したい事業者をテクノロジーで繋げることができれば、新しいプラットフォームが作れると思いました。
――なるほど。とはいえ、ゼロからプラットフォームを作り上げる際に、「何から始めるか」を選定するのは難しかったのではないでしょうか?
おっしゃる通りですね。理想の絵は描けても、それをどこから具現化していくかを考え、実行していくゼロイチのプロセスは本当に大変でした。
我々の場合、飲食店運営者と飲食店に関わる各事業者プレーヤーをつなぐプラットフォームなので、まず第一に飲食店側のニーズが一番大きな部分から着想しました。飲食店出店の際に最もニーズが大きいと仮説を立てたのが「立地」。幼い頃から実家の事業を見ていて、飲食店経営で何よりも重要な要素は「立地」であると肌で感じていました。
当時はインターネットで飲食店運営者が物件を探せるサービスは無かったので、まずは飲食店向けの物件紹介サービスに注力しました。物件情報を入口に会員登録してもらって、そこから様々な事業者を結びつけていけばプラットフォームになれると考えたのです。
人がなんと言おうと「挑戦することは素晴らしい」
――不動産業の経験もない中での立ち上げは苦労されたのではないでしょうか?
会社を立ち上げて1年経って、ようやく初めての売上が1万円立ちました。(笑)周囲からは「ダメなんじゃないか?」とよく言われたりもしました。私自身、辛い時期でもありましたが、人がなんと言おうと「挑戦することは素晴らしい」という考えを昔から持っています。
我々のようなサービスは他にないし、誰もやったことのないことに挑戦すること自体が絶対的に素晴らしい。たとえ我々がダメだったとしても、他の誰かが我々のエッセンスを汲んで成功したら業界が良くなるかもしれません。
――まさに同様に挑戦している若手起業家にとって勇気の出るお言葉です。
当時、売上はありませんでしたが、サービスを使うユーザーは増えていました。
ある時サーバーがダウンしてしまい、サービスが一時停止した際に「このサービスが使えないと困るんだよ」とお客様に言われたことがあります。そうした言葉で、あらためて自分たちのサービスの意義を感じることもできました。
目先の業績に関わらず、サービスの持つ価値に集中すること。そして「挑戦することは素晴らしい」と信じること。そうしたマインドが気持ちを前向きにしましたし、辛い時期も乗り越える原動力になったと思います。
>第2話「営業利益率40%を超える高収益企業のつくり方」に続く
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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