構想2年・PMFまで2年半。Yappli(ヤプリ)庵原保文CEOが己を信じ、貫いた成功までの道のり(第1話)

「ノーコード」で、ブラウザー上でドラッグ&ドロップするだけでスマホアプリの開発や運用、分析が可能なプラットフォームサービスYappli(ヤプリ)を展開する株式会社ヤプリ。DXを推進する画期的なツールとして導入実績は550社を超え、2020年12月に東証マザーズ上場も果たした。そんな同社を牽引する代表取締役 庵原保文氏に起業家の素養やSaaS事業の経営などについて聞いた。(全4話)

筋の良いビジネスを、常にポジティブに

ーー起業家として重要な3つの素養を挙げるとするとなんでしょうか

1つめは「諦めない」マインド。

我々も最初の2,3年は全然うまくいかなかったのですが、そういう局面を「諦めない」で耐え切り、努力し続ける姿勢が大切です。

2つめは「筋の良いビジネスをやる」こと。

我々のように外部から資金調達をして急成長を目指すスタートアップの場合は会社が大きくなることを期待されているわけなので、スケーラビリティ・将来性がある筋の良い事業ドメインを選ぶことが大事です。

最後の3つめは「前向きな姿勢」。

常にポジティブで太陽のような姿勢を持つこと。これは素晴らしいリーダーに共通しているように思います。

庵原保文/ 1977年生まれ
出版社を経てヤフー株式会社にてメディア系サービスの企画職として従事。その後、シティバンクのマーケティングマネージャーを経て、2013年にファストメディア株式会社(現 株式会社ヤプリ)を3名で創業し、代表取締役に就任。スマホアプリの開発・運用・分析をノーコード(プログラミング不要)で提供するアプリプラットフォーム「Yappli」を運営する。2020年12月東証マザーズ上場。

ーー庵原さんはどのようにしてそれらの素養を身につけられたのでしょうか?

「前向きな姿勢」については、前職のヤフー時代の上司で現東京都副知事の宮坂学さん(元ヤフー株式会社 代表取締役社長)や川邊健太郎さん(ヤフー株式会社 代表取締役社長)にかなり影響を受けました。

彼らは共通して常に「前向き」だし、悪口を決して言わない。経営者とは常にポジティブであるべきだというのは、彼らを見て学びました。

「筋の良いビジネスをやる」については、日頃からITビジネスが好きで国内外の情報を集めていると、何がビジネスとして成功しているかは必然的にわかるようになってくるはずです。

あとは実際にWebサービスを開発し、日々の改善活動をする中でいろんな成功/失敗体験を積むこと。大手企業でもスタートアップでもいいので、プロダクトを実際に開発することでセンスは磨かれます。

本当にITサービスが好きで、情報と実践の「量」をこなすことをしていれば、自然と「筋の良いビジネス」は見えてくるようになるのではないでしょうか。

“リスクしかない”時期の乗り越え方

ーー庵原さんは創業前に2年の準備期間を経て起業されています。そして創業してからも最初の2,3年はうまくいかなかったと先ほどおっしゃいましたが、どのようにして「諦めず」その期間を乗り越えられたのでしょうか?

創業前の先が見えない状況での2年間は本当に難しい期間でした。

そもそもプロダクトが完成するかわからない。できたところで売れるかもわからない。資金調達できるかもわからない。

そういう「リスクしかない」時期にやり続けられる原動力は、創業者たちの「意思」しかありません。

私たちは私とヤフー時代の同僚だったエンジニアの佐野(佐野将史/ヤプリ取締役)、デザイナーの黒田(黒田真澄/ヤプリ取締役)の3名で共同創業しました。

私はエンジニアではなく、かつメンバーは全員本業がありながらサイドプロジェクトとしてやってくれている状態でしたので、プロジェクトを息絶えさせないためにメンバーをモチベートし続けることが私の最初の役割でした。

具体的にやったことは、サービスが何もない段階でかなり気合の入ったサービスページを作ったり、開発合宿をあえて上海でやったり。メンバーが「このサービスは本当にローンチされるんだ」「自分たちのプロダクトを作って、資金調達をしてスタートアップを起業するんだ」というマインドセットになるように、あらゆる手を尽くしましたね。

 

ーーまずは「スタートアップを起業すること」自体を目標にされたのですね。

そうですね。「社会課題を解決する」などではなく、とにかく「スタートアップを始める」ことをゴールに設定したことが我々の場合はよかったのかもしれません。とにかく優れたプロダクトをつくって、資金調達をする。その2つのことに創業メンバー全員の意識を集中できたからです。

私自身のモチベーションも、周りが一番サプライズすることをしたい、いつかシリコンバレーの起業家たちのようなスタートアップを作りたい、という思いが一番でした。

結局起業するまでに私が仕様書を作るのに半年、黒田がデザインコーディングを作るのに半年、さらに佐野が実装開発に1年と、合計2年という膨大な時間を費やした上でようやくヤプリは生まれました。

周りにどう言われようと「諦めない」。創業者たちの「意思」こそが、不可能を現実にするのだと思います。

※インタビュー記事は2021年9月14日現在の内容です

 

 

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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