#ビジョン
バングラデシュで目の当たりにした栄養問題に苦しむ子どもたちを救うことを決意し、2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を成功させた株式会社ユーグレナ出雲充(いずもみつる)社長。現在同社は上場を果たし、微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品や化粧品、バイオ燃料への活用などに事業の幅を急拡大させている。出雲氏が考える起業家の素養、事業立ち上げのポイントとは。(全4話)
「まず動け、自分の居場所から飛び出せ」
ーーはじめに、あらためて出雲さんが起業された経緯についてお聞かせください。
一番起業に直結した原体験は、大学1年生の夏、生まれて初めて海外、バングラデシュに行ったことです。バングラデシュで見た子どもたちが栄養問題で苦しんでいる姿があまりに衝撃的で、それをなんとかしたいという一心で起業しました。
人は日常と完全に切り離された場所に行くと、必ず感動や苦しみ、恥ずかしさを味わうものです。そういう非日常体験が起業の原体験に繋がっていくのだと思います。
この話をすると、よく「自分もバングラデシュに行きます!」と勘違いされてしまったりするのですが(笑)、別に海外じゃなくて身近な場所でも良いんです。
とにかく「普段自分がいる居心地の良い場所を飛び出す」こと。それが原体験につながるのだと思います。
出雲充(いずもみつる)/1980年生まれ
東京大学農学部卒業後、2002年東京三菱銀行入行。在学中に訪れたバングラデシュで見た貧困の現実に衝撃を受け、2005年株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。世界初の微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)食用屋外大量培養に成功。2012年東証マザーズ上場、2014年に東証一部(現在は東証プライム市場)に市場変更。著書に「僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。」(小学館新書)等
ーー同じ体験をしても「自分の人生にとって重要な目的」と捉えられる方は希少なのかなと思うのですが、なぜ出雲さんはその体験を自分事に捉えられたのでしょうか。
本当に良い質問です。そして、それは答えの無い問いでもあります。
起業家というものは「まずやってみる」「まず口に出してみる」人。そこからすべてが始まります。
私も学生時代にバングラデシュに行った際には、栄養に関して特別な知識があったわけではありませんでした。ただただショックで、絶対におかしいと思った。
そこから必ず日本で一番栄養価の高いものを見つけてバングラデシュに持って行こうと決め、色んな人に話を聞き、めちゃくちゃ勉強もしました。そうやってまず動き、いろんな人に相談しているうちに、だんだんと自分の夢や目標を描けるようになっていきました。
目標が綺麗になってからじゃないと誰かに言っちゃいけない、なんてルールは無いのです。
「悔しい」「おかしい」「楽しい」「ワクワクする」といった気持ちに素直になり、「まずやってみる」ことが大切だと思います。
ーー栄養価の高いもの、となると様々な解決策があると思うのですが、なぜ「ユーグレナ」に定められたのでしょうか?
深掘りして、研究して、合理的に「ユーグレナだ!」という答えに着地したと思いますか?(笑)
そんなことは普通に考えていけばありえません。私ですら、ユーグレナ以外にも様々な選択肢を理解してはいました。
ただ直感的に、「バングラデシュにユーグレナの給食を持って行ったら子どもたちが間違いなく喜んでくれる」と確信できた。だからユーグレナをやろうと決めたのであって「他の手段に比べて市場ポテンシャルがあるから」といった論拠で決めたわけではありません。
「ユーグレナを持っていけば、栄養問題に苦しむ子どもたちが元気になる」。この夢をどうやったら形にできるかを考え続けて、いまも会社を続けています。
起業家の素養「HERO」とは
ーー出雲さんが考える「起業家にとって重要な素養」を挙げるとするとなんでしょうか?
「H・E・R・O」であること、あり続けること。「H・E・R・O」の4つの頭文字から始まる言葉が重要な素養です。
1つめが「H:Hope」、目標やイメージを持っていること。
2つめが「E:Efficacy」、自分にはできるんだという自己効力感を持つこと。
3つめが「R:Regilient」、しつこく何回でも挑戦し続ける姿勢。
最後の4つめが「O:Optimistic」、明るくて楽観的であること。
特に2つ目の「E:Efficacy」が日本人は弱い傾向がありますが、ポイントは「根拠は要らない」ということです。根拠なく自分のことを好きになって、自分を信じる。これはリーダーにとって必須の素養だと思います。
ーー根拠なく「E:Efficacy」自己効力感を持てるようになった要因などがあったのでしょうか?
外部要因の影響が大きい素養だと思います。やっぱり教育や家庭環境の影響は大きいですし、逆に言うと自分次第で後天的に変えることができるものだとも言えます。
私の場合は母がプロの“褒め師”で。ひたすら褒められていると、嫌でも自己効力感が高くなりますよね。逆に一番近くの家族や友達、先生に「あなたには無理だ」と言われ続けたら、自己効力感は低くなるでしょう。
切磋琢磨できるいい仲間、信じてくれる友達がいる環境に自分の身を意識的に投じること。それは大学の研究室やサークルでもいいし、企業の部署やチームでもいい。
自分の「E:Efficacy」を高めてくれる環境を諦めずに探すことは、自分の素養を磨く上でも非常に重要なことだと思います。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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