台湾発・世界17拠点で展開「AI×SaaS」グローバル事業の作り方 Appier(エイピア) チハン・ユーCEO(第2話)

2012年に台湾で創業し、「AI x SaaS」のAI ネイティブ企業として東証プライム市場上場も果たしたAppier(エイピア)。「誰もが簡単に使えるAIの普及と実用化」を推進し、企業のセールス・マーケティング活動を支援する事業を、世界17拠点でグローバルに展開している。同社代表取締役CEOのチハン・ユーが語る、起業家の素養や、グローバルでの事業成長の要諦とは。DIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤 紀行が聞いた。(全4話)

顧客課題の深さは「市場ポテンシャル」に表れる

ーー事業を立ち上げる上で、大切にされていることをお聞かせください。

まず第一に、市場ポテンシャルです。

顧客にとって本当に重要な課題であり、かつ顧客にとって真に役立つプロダクトは、必然的に市場ポテンシャルが大きくなります。

つまり人にとって本当に意味があるプロダクトを作りたいならば、市場規模の潜在ポテンシャルが大きい領域にアプローチするべきです。

例えば当社の製品のCrossX (クロスエックス)はマーケティング自動化ツールの一つで、高LTVユーザーを予測することでユーザー獲得の自動化を実現しています。

顧客獲得などのマーケティング活動は企業活動にとって非常に重要なトピックスで、だからこそ市場規模のポテンシャルも巨大です。

「市場ポテンシャル」はプロダクトを開発する上で最重要項目です。

次に大切なのは、自分たちのチームの強みを活かせるかどうかです。

私は、誰もが自分の弱点を補うのではなく、自分の強みを発揮すべきだと常に信じています。

私たちはAI企業なので、そのソリューションにとってAIが欠かせない要素かどうか。これが重要な判断基準となっています。

自分たちの強みを理解してプロダクトを検討することが、結果的に差別化にも繋がると考えています。

3つ目のポイントは顧客から学び、市場からフィードバックを得ること。

エンジニアは往々にして開発に集中するあまり、市場との接合を疎かにしてしまうことがあります。

顧客からのフィードバックを取り入れながら、常にプロダクトを革新し続けることが大切です。

 

ーー起業家によっては「顧客は答えを持っていないので声を聞きすぎない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

たしかに、顧客は自分が何を望んでいるのかわからないこともあります。

しかしながら、生活の中でどのような問題、不自由を抱えているかといったペインポイントがどこにあるかは知っています。

ですので顧客の声と言っても「どんな製品や機能が欲しいか?」と聞くことではありません。製品や機能を開発するのは私たちの仕事です。

むしろ顧客に問うべきは「どこにペインポイントがあるか」という点です。

顧客は解決策ではなく、問いを私たちに教えてくれる存在なのです。

 

世界から見た「日本市場の魅力」

ーーどうしても日本は市場が先細りしていく中で、日本で事業をすること、日本の将来性について悲観的な声も目立ちます。その点いかがお考えでしょうか?

もちろん両面あると思いますが、起業家は「良い面を拡張する」存在です。そういう意味で、日本はマーケットとして今もなお非常に魅力的です。

まず、日本は世界の中でとても重要な国です。巨大なGDPを誇る国でもあります。

市場規模が巨大なので、何かイノベーションを起こすことができれば国内市場だけでも十分大きなビジネスになります。それに比べて、台湾などは内需だけではどうしても小さいビジネスしか生まれません。

もちろん悪い面を捉えると、内需が大きいだけに国内向けにカスタマイズしすぎて海外展開がしづらくなってしまう企業が多いとも考えられますが、その条件は台湾でも韓国でも同じはずです。

日本のように恵まれた国は、世界でも数えるほどしかないでしょう。

起業家というのは、ポジティブな面を拡張していく存在であるべきです。技術革新によって未来を明るく変えるのは、我々世代のミッションだと思います。

 

ーーグローバルに事業を展開する上で大切にされているポイントをお聞かせください。

最も重要なのはマインドセットです。

視野を広げて異なる国・地域でのオペレーションの難しさを受け入れることさえできれば、それだけでアプローチできる市場規模は拡大します。

「オープンマインド」についてお話ししたように、常に現在の市場とは異なる市場にも目を向け、チャンスと捉えることができるかが重要です。

次に、様々な国で共通する「分母」を見つけることです。

国ごとに異なるバージョンのプロダクトを構築するのではなく、単一プラットフォームで展開していくためには、「すべての国の顧客の共通課題=分母」を特定し、開発することが重要です。

プロダクトとして解決すべき「分母」を特定することが、グローバル展開においては大切だと思います。

 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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