【イベントレポート:出版記念トーク】事業のタネを見つけるには? SHOWROOM 前田裕二社長(第1話)

DIMENSION株式会社は、『スタートアップ――起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則』の出版記念イベントを開催した。当日はSHOWROOMの代表取締役社長 前田裕二 氏に登壇いただき、DIMENSIONビジネスプロデューサーであり著者の伊藤紀行とトークセッションや公開質疑を行った。本稿では、本イベントの内容を一部レポートする。(全2話)

第1部:事業の発見

ーー伊藤:本日は広くビジネスに活用できる事業課題の発見法や、仮説検証の原則といったところを前田さんのリアルな事例をお伺いしながら学びを深めていけたらなと思っています。

今回の本『スタートアップ――起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則』は、DIMENSION NOTEで70名を超える起業家の方のインタビューというのを過去数年にわたって行ってきまして、そこで得られたエッセンスをぎゅっと凝縮したような本です。

伊藤紀行(いとう・のりゆき)
早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。
株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。
ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。

 

スタートアップを始める時、タネを見つけて仮説を磨いていくところからスタートし、最後に順調にいけばIPOというプロセスがあるのですが、それぞれのステップで大事なところを400ページ超にまとめたというところです。

起業家がスタートアップの主役だと思っておりますので、我々投資家の目線だけではなくて、これまで実績を上げられてきたスタートアップ経営者の皆さん、本日の前田さんを筆頭に多くの方に出ていただいて、彼らのリアルな実体験を紹介させていただきます。

ここから前田さんをお迎えしてトークセッションに進んでいきます。

 

事業の見つけ方1つ目:「痛みから始める」

ーー伊藤:大きく分けて「事業の発見」、その後に「仮設の構築」「検証」、この3つに分けてお話を進めていきます。

本の中で70名を超える起業家の方のお話を伺ってきて見えたのは、やはり自分の体験したこととか、原体験やちょっとした気づきをもとに事業のタネを見つけている方が多いなということです。前田さん、いかがですか?

前田:いわゆるコンサルやベンチャー界隈では「イシュー」という言葉がよく使われるのですが、要は「課題」、取り組むべき課題の見つけ方は、2パターンしかないと思います。

 

前田 裕二(まえだ・ゆうじ)1987年東京生まれ。
2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。
その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があった株式会社DeNAのファウンダー南場智子氏に相談したことをきっかけに13年5月、DeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。
15年8月に会社分割によりSHOWROOM株式会社設立。現在は、SHOWROOM株式会代表取締役社長として「SHOWROOM」事業、ならびに2020年10月にローンチしたバーティカルシアターアプリ「smash.」事業を率いる。
2017年6月には初の著書『人生の勝算』を出版し累計16万部超のベストセラー。近著の『メモの魔力』は、発売2日で17万部、現在75万部突破(電子版含む)。

 

前田:1つ目は「痛みから始める」こと。

不安や不満など「不」がつくもの。個人的には「痛み」とよく呼びますが、のですが、苦しいこと、思い通りにいかないこと、悲しいこと、イライラすること…そういったなんらかの負の感情を取り除いて課題解決していくのが事業だと思います。例えば今、目の前にお水がありますが、これも勿論例外ではなく、「のどが乾いている」という痛みを取り除いてくれるから、僕らはその対価として100円を払う。

その「痛みから始めよう」というのが1つ目の方向性です。

そして具体的にその痛みを2つに分類すると、「自分の痛み」と「身近な誰かの痛み」です。共通するポイントは、自分が本気でその痛みを取り除きたいと思えるかどうか。そう思えるのであれば、必ずしも自分ではなくてもOKです。

例えば「自分の痛み」パターンでいうとAirbnb。

Airbnbは家の遊休スペースのシェアサービスで始まったのですが、最初は「家賃を払えない」という自分の痛みからスタートしました。かなり辛いですよね、口座に今月の家賃を払うだけの金額が入っていない、どうしよう、と。

そこで、週末など空いている時にに友達へ家を貸したら家賃を払えるのではと思い試したところ、空いている遊休時間をお金に換えることでマネタイズできた。家賃を払えないという「自分の痛み」を取り除くことに成功した事例です。

「身近な誰かの痛み」でいうと、例えば“座ったら立ち上がれない”ビーズクッションで有名なYogiboの起業ストーリーがあります。

Yogiboの場合、「奥様が妊娠中の妻の為に、うつ伏せに寝ても楽になるソファを作ろう」という思いで作ったものだそうです。つまり「の痛みを取り除いてあげたい」からスタートしたのです。

まとめると、解くべき課題の見つけ方には2種類あり、1つ目の「痛みから始める」という方法にも2つ方向性がある。「自分の痛み」か「身近な誰かの痛み」か。いずれにせよ「自分が本気で助けたいと思える痛み」に着目することが大切です。

 

ーー伊藤:「自分が本気で助けたい痛み」というのが重要ということですね。

前田:そうですね。それも「今現在進行形で痛い」ことの方が、より本気度が上がるのでよいですよね。

例えばですが、に昔経験した受験勉強が苦しかったとして、何か受験勉強をもっとスムーズにさせるサービスを作ろうと、過去に遡及して昔の自分や昔の友達の痛みを取り除くことも一定考えられますが、若干時間軸が遠いですよね。多くの場合、それでは本気度が下がってしまいます。

結局どれだけ高い熱量で取り組めるかが重要なので、「今現在進行形かつ自分の痛み」が理想的です。

ですから皆さんが今この瞬間に苦しいことがあるならば、むしろラッキーなことです。

音楽やエンタメが痛みを取り除く作用もあります。

私たち起業家は痛みを事業という形で救っていく。取り除いた痛みの総量を売上や利益という目に見える数字に変換をしていく作業がビジネス。そう考えるとシンプルです。

 

事業の見つけ方2つ目:「得意から始める」

ーー伊藤:課題の見つけ方、「痛みから始める」以外のもう1つのパターンはどういったものでしょうか。

前田:2つ目は「得意から始める」こと。

これはさまざまな本で「良くない起業のあり方」とされています。「痛みから始める」方が成功確率は高い、と。なぜか分かりますか?

ーー伊藤:なぜでしょう?

前田:好きや得意から始めることは、必ずしもマーケットが存在するか分からないという問題があるからです。

得意なことは、基本「好き」なことから始まっていることが多いと思います。好きで、そこに時間を大量に投下するから得意になっていく。

例えば、僕が「FAXが好きで好きで仕方ない、FAXに1万時間投下する、FAX音を聞くだけでご飯を食べられる」みたいな変人だとしましょう(笑)。スタートアップ界隈では一番僕がFAXについて得意ということにします。

ではFAXが好きで得意になったからといって、今FAX事業を立ち上げてマーケットにニーズがあるかというと、アナログの紙にしなくて良くない?LINEでPDF転送すればいいじゃない?となるでしょう。

音楽やエンタメも同様、自分が好きで得意でやっていたことが、運良くたまたまマーケットが「迎えにきてくれる」パターンがあります。

今でいうと、例えば、韻を踏む音楽がTikTokで再生されやすいとします。「なるほど、エジソン→自尊心など、韻を踏んだ方がTikTokで伸びるんだ」とマーケット分析して歌詞を書く人もいれば、そんなことを意識せずたまたま自分が作りたい歌詞を作ったら、結果市場に受け入れられる人もいる。

これは起業家も同じで、好きで得意で作っていたら、たまたま市場が迎えに来てくれることがありますが、運に頼ることにもなるため成功確率が高くならない、というわけです。

 

最終的には「誰かの痛みを取り除く」のがビジネス

ーー伊藤:ちなみに前田さん「痛みから始める」「得意から始める」どちらのパターンだったんですか?

前田:冒頭あそこまで言っておいて本当になんではありますが実は、僕は「得意から始める」パターンだったと思います。こんなに痛み痛みと言っているのに(笑)。

SHOWROOMは、配信者へギフティングをするサービスなのですが、僕は小学校6年生から路上で弾き語りをしていたので、日本の、少なくともIT業界では誰よりも「そもそもおひねりを人が何故投げるか」といった、投げ銭について詳しいと思っていました。

それは自分が音楽好きで、ずっと続けていたからこそ。

得意を軸に何かビジネスを作れないかと思っていたら、ちょうど中国でYYというライブ配信サービスが立ち上がってきているのを見つけ、初めてマーケットがあることも知った。

本当は「痛みから始めた」と言った方が格好良いのですが、僕は好きから「音楽関連のビジネスをやりたい」という気持ちで始めています。

 

ーー伊藤:「得意から始める」上で、前田さんのようにマーケットリサーチをしたり、中国を実際に訪問されたりしたのがポイントだったように思います。

前田:そうですね。実際に訪問し、これを日本に持ってくることは、マーケットニーズの可能性があると思ったのです。

つまり、好きや得意から始めつつも、何か同様の痛みを持っている人がマーケットにいそうだなと予見を持ちながら始めることは大切だと言えるでしょう。

 

ーー伊藤:70名を超える起業家の方へのインタビューを経て、3つぐらい大きいパターンがあるなと思い本の中でもまとめているのですが、
1、自分自身が感じた課題をもとにする
2、自分の得意領域を選ぶ
3、タイムマシン経営(海外でうまくいっている事例を日本ならではの形で展開する)
という戦い方をしている方がいらっしゃいます。

その中で一例を紹介すると、DIMENSION NOTEにも登場いただいているカバー株式会社の谷郷社長です。

2023年3月に上場されたのですが、彼のプロセスが面白くて。実は今回の起業が40代に入ってから2回目の起業。30代の時に1度起業したのですが、その時はふわっとしたビジョンから始めてしまって、凄くいい位置にはいたけれども、事業が一定規模のところで成長が止まってしまったのだそうです。

その事業も売却されているので失敗ということではなかったのですが、次はどんな著名な経営者が来ても絶対負けない領域でやるんだと決めて、新卒から働き続けてきたエンタメIP領域で再度起業されました。

なので、前田さんが既にたくさんの大事なポイントをお話しされたかと思いますが、やはり得意領域で戦うパターンというのも、一つの勝ち筋としてはあるんじゃないかなという風に思います。

前田:得意領域は、誰かの痛みにアドレスしやすいんですよね。得意なことで誰かの課題を解決してあげることで、自分の存在意義を感じることができて、こちらもどんどん幸せになる。

例えば先ほど挙げられたホロライブ(カバー社)でいうと、VTuberは「顔を出さなかったら表現者になれない」という世界に対してのアンチテーゼですよね。

自分が表に出ることに課題感を持っている、ある種のそういった「痛み」を持っている故に、エンタメ界の今までの仕組みでは輝けなかった人たちに対してVtuber市場は新しい多様な輝き方を提供しています。

またVtuberの応援を通じて、「自分も必要とされている」といった、ファンの方々の社会との接続を作るという側面もあります。普段社会に対して接続性を感じてない人たちの「痛み」を取り除いている。

だからこそいまの結果に繋がっていると思いますし、得意から始めることが、結果的に誰かの痛みを取り除きやすい、という部分はあると思います。

伊藤さんが挙げられた3つ目のタイムマシン経営だとしても、最終的には何らかの形で誰かの痛みが除かれている。

どのルートで事業を始めたとしても、最後は誰かの痛みを取り除くことがビジネスなのだと思います。

 

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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