#インタビュー
「誰でも、何処でも、簡単に、自由に、M&Aが出来る社会を実現する」をビジョンに掲げ、M&A総合プラットフォーム『BATONZ(バトンズ)』を提供する株式会社バトンズ。同社代表取締役CEO 神瀬悠一氏に経営者の素養、スピンオフまでの道のりなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの古家広大が聞いた。(全4話)
型化を徹底し、仕組み化する
ーーM&A業務の未経験の社員の方でも、素晴らしい成績を上げてらっしゃる方がいるとお伺いしました。どのように未経験者でも営業の成績を上げられる仕組みを作られたのでしょうか。
これはバトンズの今を形作る上での根幹にもなっていますし、バトンズらしさを体現しているところでもあります。
実は、私もバトンズにジョインする前は中小企業のM&Aのアドバイザーをやったことがなかったんです。なので自分で何件かやってみたんですが、その時にもっと労働集約じゃなくて「型化(かたか)」できるという手応えを持ちました。
逆に言うと、なぜ労働集約になるのかというのは3つあります。
1つ目は経営者からの受託が難しいこと。
M&Aって経営者から「M&Aをあなたにお任せします」とお願いされるのがすごく難しいんです。それは提案力と行動量という、いわゆるトップ営業マンの力が必要ですよね。
行動量と顧客接点が多く、そこでのコミュニケーションでお客様に納得いただける提案力があるかという、これが労働集約になる原因の一つなんです。
2つ目が、M&Aを進める上でトラブルになりやすいことも含めて、M&Aに必要な財務とか労務とか法務とかの知識が必要であること。
3つ目がコミュニケーション能力と信頼関係構築能力。これは自分自身でM&Aをやってみて一番大事だと感じました。
コミュニケーション能力って、経営者の方にヒアリングをして相手のビジョンや戦略をきちんと理解するというのもコミュニケーション能力ですし、売り手さん買い手さんの条件をネゴシエーションしながら調整していくということもコミュニケーション能力なんです。
経営者さんから信頼される人というのはそれがベースにあって、このコミュニケーション能力が労働集約になる理由の3つ目なんですね。
この3つを型化して解決できないか自分でもやってみました。
プラットホームがあればマーケティングで売り手をどんどん集めてくるという仕組み化ができるので、1つ目の受託が大変というところから営業を解放することができました。
2つ目の知識の部分は、日本M&Aセンターグループ出身という強みではありますが、バトンズにもM&Aの財務・労務・法務も含めた色々な経験だったり知識が豊富な方がいるんですね。その方々が営業チームをバックアップできる体制があるんです。
なので一番若い営業の方がちょっと困った時にすぐ「こうすればいいんじゃないか」とアドバイスをもらうことが出来る。いわゆるM&A業界で15年・20年活躍されてきた方々のバックアップ部隊を持っているということで、仕組み化できているなと思っています。
3つ目の経営者さんの懐に入り込んで信頼関係をつくるというところは採用活動。対人親和性が高くてコミュニケーション能力が高いかどうかって多くの会社で選考基準にされていますよね。
そこをクリアした方に仲間になっていただければ、あとは先ほど挙げたような仕組みや、バックアップの体制や進め方の型化を進めれば良い。
コミュニケーション能力が高い方に仲間になっていただければM&A経験が豊富かどうかは関係なく拡大生産できて仕組になるというのが、私がやりながら感じたことです。
ーーそれこそ「まず一回やってみる」から始まったという流れでしょうか。
何件か自分でもやって「ああこれは労働集約になるな」と気づきました。これは営業の型化を徹底的にやるという前職のリクルートの影響も大きかったと思います。
リクルートは「最初に何を話すのか」とか「提案のフレームワークをどうするか」といった型化が得意な会社で、そういうのを見ていたのでM&Aもまだまだ型化ができるなって思ったというのが最初の着想でした。
それを地道に仕組み化していったら、今ではM&A経験のない方でも成約支援ができるようになってきているという流れです。
バランスを求めるなら大企業へ。“熱狂”がスタートアップの醍醐味
ーー実際オフィスにお伺いして、雰囲気もそうですし皆さん活発に話し合いながらお仕事されているなという風に感じます。このような組織をつくるにあたりポイントなどはあったでしょうか。
バトンズは今ちょうど70名ほどですが、みんなやはりバトンズのことが好きで、バトンズが追いかけているビジョンに対して非常に共感していただいていて、そこに対して前向きに取り組んだり夢中になってくれている社員が総じて多いです。それが今言っていただいたような雰囲気とか組織文化になっているのかなとは思います。
採用プロセスの中で重視すべきポイントをビジョンへの共感や、その方がどれだけスタートアップに来るうえで「チャレンジしたい」みたいな気持ちを持っているかを重視してきたのが、今のバトンズの組織が出来上がっている背景かなと思います。
ーー「チャレンジしたい」という気持ちを実現できる環境が整っているということなのですね。
そうですね。弊社は3ヶ月前と3ヶ月後で一気にプロダクトを変えにいくなど、やはりスピードは早いです。なので2年ぐらいずっと同じことをやっている社員はほとんどいないかもしれないですね。
みんな新しいテーマに向き合って、次の課題を一つクリアするとまた次の課題に向き合う。それはスタートアップなので当然だとは思うんですけれども、そういう意味ではみんなにとっていろいろな壁が現れてくるので、その分張り合いや、やりがいがある状況にはなっているかなと思います。
ーー最初におっしゃられた「みんなバトンズが好き」というのは大事なことだなと思うんです。それはどうやったら実現できるのでしょうか。
難しいことですよね。でも、やはり世の中全体の風潮って「ワークライフバランス」とか「ダイバーシティ&インクルージョン」ですよね。
スタートアップにおいても多様性は大事です。弊社も職種が沢山あって、男性女性も多い。
ですが、やはり70人の組織って同じ方向性に向かっていかないとならないですし、正直ワークライフバランスを一番重視したいのであれば、大企業に入った方がお互い幸せだと思います。
100ある自分のパワーを私生活50仕事50というふうに分割する考え方と、全部100やるんだという2タイプに分かれると思うですけど、スタートアップは熱狂集団になって、100/100でプライベートも一生懸命、仕事も一生懸命という状態であるべきです。
それを50/50と考えるんじゃなくて両方100だというふうに思えるような仲間に僕らはどんどん成長機会を与えたいですし、そういう仲間にどんどん入ってほしいなと思っています。
安定している事業構造の環境の中というより「荒波の中で走っている」組織なので、100/100の人の方が絶対スタートアップの醍醐味を味わえます。それが良い経験になって次のいろいろな個人の成長にも活きてくるのかなと思います。
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古家 広大
早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。
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