先達に学ぶ ー第10回 中国・Legend Capital朴さんからの学びー

「起業ノウハウ」について

皆様、こんにちは。

国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役社長の宮宗(みやそう)と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。

私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、累計12社の上場/MBOに携わってきました。またこれまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると、多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。

2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、

  •  起業
  •  増資・融資
  • 組織作り
  • 経営推進・事業拡大
  • 上場

を中心に、取り上げていきます。

 

今回は、中国・Legend Capital社の朴焌成さんからの学び。

Legend Capital(以降、LC)社は、世界最大のPCメーカー・レノボの筆頭株主である中国・Legend Holdings傘下の大手VCです。2001年4月に設立されたLCの本社は北京。上海・深圳・ソウルに支社を持ち、現在、計1.3兆円(1ドル130円換算)の米ドルファンドと人民元ファンドを運用中。21年間で約600社に出資し、120社以上がNYSE・NASDAQ・ HKEX(香港証券取引所)などに上場しています。

成長スピード、ファンドの規模感、出資先2割が上場している実績は、日本最大手VCのジャフコ以上で、日本とはケタ違いのビジネスを手がけているのがわかるかと思います。

 

※左が朴さん、真ん中・C Channel森川社長、右・DIMENSION宮宗

 

朴さんは2005年にLC社に入社し、現在の役職はManaging Director。前職の仕事を通じて朴さんとの面識を得て、2018年にLC社初の日本のスタートアップC Channel社への協調出資をアシストさせていただきました。

朴さん&LC社の2社目の日系スタートアップへの出資は、2022年6月に東証グロースに上場したバーチャルYouTuber(VTuber)事務所を運営するANYCOLOR社(5532)。初値の時価総額は1,440億円で、LC社はANYCOLOR社の持株比率10%の第二位株主。LC社は日本のスタートアップ投資でも成功されています。

今回は、朴さんから学ばせていただいた、出資の考え方とBizパーソンとして大切な事をご紹介します。

 

VCとしての出資条件/提供価値の明確化

朴さんは日系スタートアップへの出資の際は、以下4つを前提条件に考えられている旨を伺いました。

  •  “強い差別性がある事業を手がけている事”
  •  “既にビジネスを一定規模に拡大させている事”
  •  “海外でも事業拡大できるビジネスモデルである事”
  •  “LC社が持つネットワークや強みを活かして、事業拡大できる見込みがある事”

 

ポイントは4番目。
これが、LC社がお金以外の面で起業家から選ばれる要因になっています。

出資先のANYCOLOR社に対しても、LC社の出資先で中国のニコ動=大手動画共有プラットフォームでNASDAQ・HKEXに上場しているBilibili社と合弁会社を設立。ANYCOLOR社のVTuberはBilibili社を通じてもライブ配信をしています。

また朴さん&LC社は、世界的アーティストとなったBTSのマネジメント事務所・(韓)HYBE社にも未上場時に出資しており、ANYCOLOR社の経営陣にHYBE社の成長の歴史と収益化・多様化の経緯をインプット。HYBE社のCEOをANYCOLOR社の田隅CEOに紹介し、HYBE社の経験を共有しながら、将来的な協力の可能性を議論したそうです(出所: Legend Capital HP)。

4番目のLC社の「ネットワークや強み」は、短時間で構築はできないもので、過去~現在の取り組みの一貫性や、大きな事業を作り上げてきた出資先起業家や社外パートナー企業との信頼関係が求められます。

このように「出資条件」を明確にし、お金以外を含めた「強みと提供価値」に関して一貫性を保ちながら強化し続けていることが、LC社・朴さんのファンドとしての成績の高さにつながっていると考えています。

 

人間関係と信頼を重視しながら、常に学び続ける

LC社の朴さんは、前述の(日)ANYCOLOR社やBTSのマネジメント事務所・(韓)HYBE社など、クロスボーダー投資で成功されているのですが、お会いするといつも大変謙虚で、そうした姿勢からもたくさん学ばせて頂いています。

社外パートナー企業との関係強化も印象的です。2019年10月北京でのLC社の会合で朴さんのアレンジにより伊藤忠商事の方とランチをご一緒させていただいたのですが、翌2020年にLC社は伊藤忠商事とANYCOLOR社に出資。ANYCOLOR社の東証グロース上場時の伊藤忠商事側の主担当は、私が北京でやり取りさせていただいた髙木さんでした。改めて、朴さんが人との縁を大切にしながらBiz拡大されているのを実感できる上場になりました。

※ANYCOLOR上場時の東証前での写真(2022年6月9日)
左から、伊藤忠商事・髙木さん、ANYCOLOR社の田隅CEO、釣井CFO、LC社の朴さん
出所: Legend Capital HP

 

また朴さんは、常に新産業の調査・分析をし続けているお一人。

2022年6月にお会いした際も、中国デジタルヘスルケア産業の過去~現在の推移(=2014年の規制緩和により、平安グループの参入、JD.com 社の医薬品販売事業部のスピンオフ、アリババのM&Aによる市場参入などで、デジタルヘスルケアのサービスが急拡大)、成長ドライバーと市場の将来像などをしっかり押さえながらデジタルヘルスケア産業への出資を検討されていて、本当に素晴らしいと感心させられました。

私も朴さんのように謙虚に奢らず、常に環境変化を押さえながら自社の「強みと提供価値」の一貫性を保ちながら強化を図り、それらをメンバーの力を借りることで加速させたいと思っています。

その延長として、朴さんのように世界を股にかけて大活躍されている方とも今まで以上に連携し、結果、意義ある事業を手がける起業家創出に貢献したいと考えています。

 

起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回第9回もご参考にしてみてください。

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