“イノベーションの熱に触れてみる”グッドパッチ 土屋尚史社長の事業アイディアの探し方(第2話)

「デザインの力を証明する」をミッションに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)に欠かせないUI/UXデザインのリーディングカンパニーとして存在感を高め続けている株式会社グッドパッチ。2020年には東証マザーズ上場も果たした。そんな同社を牽引する代表取締役社長/CEO 土屋尚史氏に、起業家にとって重要な素養、成長事業の創り方などについて聞いた(全5話)

運命を変えたシリコンバレーでの衝撃

ーー土屋さんがデザインの領域で起業されたきっかけをお聞かせください。

私が起業をしようと決めたのは27歳の時に、祖母の遺産が見つかったことがきっかけでした。そしてそれを軍資金に、2011年にサンフランシスコに渡りました。その時は何の事業をやるか全く決めずに、とにかくシリコンバレーに行けば何か見つかるだろうと(笑)。しかしその経験が、私にとって大きなターニングポイントになりました。

2011年はちょうどUber(2010年〜)やInstagram(2010年〜)が出てきたタイミングで、シリコンバレーから多くの著名スタートアップが生まれた年。当時はAirbnbが30人規模、Uberも10人程度のチームでコワーキングスペースに拠点を構えていたような時代でした。

私は3ヶ月ほどサンフランシスコの会社で働いたのですが、オフィスの2ブロック先にInstagram、3ブロック先にTwitter、4ブロック先にはPinterestがいるという場所。まさにイノベーションのメッカだったのです。

その街で毎日のように開催されるピッチ大会に参加して、明らかに日本とレベルが違うと感じたのが、シリコンバレーのスタートアップが作るサービスの「UI/UXデザイン」でした。

私は日本でWebデザイン会社でディレクターとして働いた経験がありましたが、明らかに日本にあるアプリのUIはシリコンバレーのそれに比して見劣りしていました。

シリコンバレーのスタートアップはβ版の段階からUIデザインを差別化要素として非常に力を入れていて、創業者の中にもデザイナーがいる。説明がなくとも直感的に理解できるシンプルなUIデザインばかりだったのです。

それを証明するように、Instagramは初期の頃はずっと英語版アプリしかありませんでしたが、日本でもユーザー数を急成長させていきました。

この事実を見た時に、日本も「デザインの力」がもっと求められるようになると確信しました。そして帰国後、UIデザインにフォーカスしたデザイン会社を創業したのです。

 

イノベーションの最先端に飛び込め

ーー創業当時はコワーキングスペース事業もやられていました。こちらはどのような理由だったのでしょうか?

シリコンバレーにたくさんあり、スタートアップを次々と輩出するコワーキングスペースのような存在が日本にはほとんど無かった。ゆえに必ず求められるようになるだろうと考え立ち上げました。Goodpatchの社名の由来も、Instagramを輩出したDogpatch Labs.というコワーキングスペースです。

この意思決定は今思えば若気の至りでした。起業したての限られたリソース内で複数の事業を持つ会社は決してうまくいきません。

特にコワーキングスペースは資本力がある程度必要なビジネスですから、緻密な計画と準備が求められます。弊社も創業から半年もするとキャッシュがすぐに枯渇してしまいました。

そうしてなんとか会社を存続させるために、必然的にUIデザインに事業をフォーカスせざるを得なかったというのが本音です。しかし事業を絞ったことが、その後の会社成長のきっかけとなりました。

 

 

ーーいずれもイノベーションの最先端に触れることで創業のアイディアを見つけられたのですね。今、起業を考えるような人はどこに着目すべきでしょうか。

状況によりけりなので一つに断定することは難しいですが、ここ数年のイノベーションを見ていると、やはり中国が発信拠点になっているのは間違いないでしょう。

中国でビジネスをする難しさはあれど、事業のインスパイアを得るという意味では今の中国にはたくさんのヒントがあるように思います。

情報は世の中に山のように溢れていますが、実際に飛び込み、イノベーションの熱気に実際に触れてみること。この「行動」が大切なのではないでしょうか。

 

 

 

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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