#起業家の素養
先達に学ぶ -第16回 心を動かす出会いと言葉-
「起業ノウハウ」について
皆様、こんにちは。
国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役社長の宮宗(みやそう)と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。
私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、累計19社の上場/Exitに携わってきました。またこれまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。
2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、
・ 起業
・ 増資・融資
・ 組織作り
・ 経営推進・事業拡大
・ 上場
を中心に、取り上げていきます。
今回は、心を動かす出会いと言葉。
先日、2022年11月に東証グロース市場に上場されたベースフード社の橋本社長が、2017年から参加しているエクストリーム・カンファレンスICCで最も印象に残っていることの1つを、自身のSNSでUpされていました。
・ICCの詳細は、2022年11月にUpした起業ノウハウ「-第11回 ICCからの学び-」を参照ください。
それは2019年9月のICCのあるセッション終盤の橋本さん起点の質疑で、偶然私も携わっていました。その質疑後、250名入る一番大きな会場全体が揺り動かされるぐらいの大きな拍手が起こり、空間が異常な熱量で満たされたのを今でもハッキリと覚えています。
橋本さんは「スケールの大きいメッセージを受け取りビビりました。」とSNSで書かれていますが、ベースフード社のその後の事業の急拡大と3年後の上場に大きくプラスになった出来事だったと私は思っています。
・ ベースフード社の売上1.7億円(2019年2月期)⇒ 98.6億円へ(2023年2月期)
【出典:ベースフード社・有価証券報告書】
【出典:ICC 公式HP】
それぐらい橋本さんの内面に影響を与え、その後の行動も変えた「出会いと言葉」を今回ご紹介します。
■世のため人のためを目指し、人々が喜んでくれるから事業は大きくなる
上述のICCのセッションでは、第二電電(現KDDI)、イー・アクセス(現ワイモバイル)を創業し、いずれも巨大企業へと成長させた千本 倖生さんが初めて登壇されました。私はそのセッションのナビゲーターとして壇上に上がり、千本さんら先輩起業家に後輩起業家・経営者が質疑する場をファシリテーションさせて頂きました。
その質疑で一番印象に残る話をされていたのが千本さんでした。時には会場の笑いを誘いながら、ご自身の経験に基づいた起業や事業拡大の本質をわかりやすく話して頂きました。
終盤、千本さんからICC来場者へのメッセージを頂いたのですが、その内容は大きな事業を創る起業家・経営者が押さえるべきエッセンスが詰まったものでした。
【出典:ICC公式 HP】
- “経営陣は、お互いに補完できる関係にあるかが非常に大事。”
- “そしてもう一つは、相手の人間性と志、ビジョンが共通化しているかが重要。”
- “お金や名誉を追い求めても事業は長続きしないし、大きくなれない。”
- “世のため人のためを目指し、人々が喜んでくれるからこそ事業は大きくなる。”
- “事業を行うために大事なのは、事業に対する思いと、それによって人格や人間性を高めること。
- “若い経営者の皆さんは、基本的に謙虚であり、人間性を磨こうというマインドセットを持ってほしい。
それが、遠回りに見えても成功への鍵だと思う。” - “経営の原点をいつも心の隅において、事業を行ってほしい。そしてこの貧しい状態にある日本を成長させ、中国に追いつくような国にしていってほしい。”
私自身、その内容を定期的に振り返りながら、時には出資先の起業家・経営陣にも伝えるようにしています。
■大きな目標を掲げ、絶対的な壁を突破するという深い信念を持つ
セッション残り5分。私は来場者からの質問を募ったのですが、スケールが大きい話の連続で誰からも手が上がりません。その時、たまたま目が合ったのが会場にいらしたベースフードの橋本さん。橋本さんとは前から面識があったこともあり半ば強制的に質問を促したところ、恐る恐る以下の質問をしてくれました。
【出典:ICC 公式HP】
- “我々の会社は時価総額20〜30億円のベンチャーです。2,000億円より大きい企業を目指したい時、何を大事にすべきでしょうか。”
それに対し、千本さんは言葉を慎重に選びながらゆっくり答えられました。
- “今後、あなたが予想していないような困難、絶対的な壁にぶつかるだろうと思います。”
- “その時に考えるべきは、自分が本当に社会のためにやっているかという原点に立ち戻ることで、かつ、その壁を乗り越えられるという、深い、深い信念を持つことが必要です。”
- “ひるんではいけません。一度ひるんでしまうと、気持ちを取り戻すのは難しくなるのです。”
- “ですから最初から、越えられる、突破できるという信念を抱きましょう。”
- “そして目標は、2,000億円と言わず、1兆円と言ってみましょうよ。”
この回答の後、大きなどよめきが起こりました。巨大な事業を創った起業家は見ている規模感がそもそも違う。多くの方がそのことを感じた瞬間でした。
一方、質問者の橋本さんにとっては想定外の出来事だったと思います。ただその偶然のやりとりから生まれた言葉が、環境の雰囲気とあいまって橋本さんに刻み込まれ、その後の橋本さんの経営への向き合い方と行動が大きく変わるキッカケになったと感じています。実際、SNS上で橋本さんはこの出来事について以下のようにおっしゃっています。
- “それ以来、正しいことをしようとする、時価総額1兆円を目指す、をセットでやり続けてきました。”
自分より経験や事業ステージが上の方との対面でのやり取りは、時に自身が情け無い思いをしたり、プライドが傷ついたりして居心地の悪さや大きなストレスを感じることも多々あります。そうした場を避けたくなる気持ちもわかるのですが、逆にそうした機会に正面から向き合い積極的に身を置くようにすると、自身の考え方や行動が良い方向に一気に進化することも多いと感じています。
スケールの大きい事業を創った方との出会いや気づきによって意識・姿勢・行動を昇華させ、その結果大きな事業が生まれる。そうした良い循環に、私も少しでも貢献できればと思っています。
※上記橋本さんと千本さんとのやり取りの詳細は、以下のICCの記事も参照いただければと思います。
・ ICCサミット KYOTO 2019の特別企画「レジェンドが語り尽くす!メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?」
6.「起業家はひるむな、深い信念を抱け」レジェンド経営者が贈るメッセージ
また、起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回、第7回、第8回、
第9回、第10回、第11回、第12回、第13回、第14回、第15回もご参考にしてみてください。
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