「起業ノウハウ」について

皆様、こんにちは。

国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION（ディメンション）の代表取締役社長の宮宗（みやそう）と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE（ディメンション ノート）に目を通して頂き、ありがとうございます。

私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、合計21社の上場／Exitに携わってきました。またこれまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。

2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、
・起業
・増資・融資
・組織作り
・経営推進・事業拡大
・上場
を中心に、取り上げていきます。

今回は、事業を伸ばす起業家の予兆。

直近、面識得てから20年近くたつ上場創業社長の取材現場に同席し、創業期の話を伺いながら質疑できる機会がありました。
・当該社の創業は1990年代。上場してから10年以上経過し時価総額・数百億円へ。直近売上・数百億円で増収増益を続け、新卒採用は100名以上。昨年は中計を上方修正するなど高成長を続ける1社。
・面識を得た2004年当時からは想像できない事業ステージへ。

「（事業拡大させる起業家が実行していることを、やはり創業期から押さえている。）」と内心感心させられながら、別の機会でお会いした創業期の起業家・経営チームから、「（試作品を作り終わった今のタイミングで）事業を伸ばすには、何に取り組むのがよいでしょうか。」と真剣な質問を頂いたことを思い出しました。

私自身、仕事で数千名の起業家・経営者にお会いし経験を重ねた結果、事業を伸ばす起業家は創業期から「（あっ、この方は大きな事業を創られそう。）」と、初回Mtgで質疑をしながら成長の萌芽を感じられるようになってきました。

前職での出資・支援先になりますが、創業期にお会いして初回Mtg後に「事業拡大する。大きく出資・支援すべき。」と即・判断した起業家の一人が、当時20代のAnyMind Group十河社長。
・AnyMind Groupは創業7年目の2023年3月、初値570億円で東証グロース市場に上場。売上242億円、従業員数1,312名、13か国展開と急成長を達成。
【2022年12月時点、出所：事業計画及び成長可能性に関する事項について】

※ 2017年、当時のAnyMind Groupのタイ・バンコクのオフィスにて。真ん中・AnyMind Group十河さん、
一番右・DIMENSION宮宗

 

・今回、起業したての方や起業を考えられている方が、創業期にこうした点を押さえると事業拡大の確率が高まると感じていることをご紹介します。

 

■大量行動と前職での実績や評判が、成果をもたらす

結論から伝えると以下4つを創業期に押さえている方は、事業拡大の確率が高いと感じています。
・桁違いの「量」をこなす
・前職・学生時代に実績を出す and/or 良い評判を得る
・応対の質を高め、ファンを増やし進化し続ける
・独自の事業展開シナリオを持つ

順番に説明します。
まずは１つ目の桁違いの「量」をこなすに関して。

先ほどお伝えした上場創業社長は、創業前に48社の競合業態を訪問し、一人一人に直接話を聞いて事業のポイントを押さえてから起業したそうです。
数社ではなく48社を訪問。それだけの量をこなせば、本人しか見えないポイントや傾向、お客様のニーズにどう応答するかなど、多くのことがわかってくるはずです。

またそれだけの「量」をこなすには、本人の強い想いが必要です。

以前、本メディアで取材したユーグレナ創業者の出雲さんも、資金調達の際に501社目で話を聞いてもらえたエピソードと共に「量が大事。トライした数が特別な縁、質に転化する。」とおっしゃっていました。
・出所：先達に学ぶ －第14回 ユーグレナ・出雲さんからの学び－

創業期の方は、是非桁違いの「量」をこなして欲しいと思います。

 

事業拡大の予兆の2つ目になりますが、前職や学生時代に以下のいずれかを体現しているのが理想です。
・前職や学生時代のメンバーが認めるような、やり切った経験や実績がある。
・（同上）メンバーが苦しかったシーンで、手を差し伸べメンバーを救っていた。
・（同上）メンバーから、大変お世話になったと感謝されている。

これらはリーダーの素養とも置き換えられます。起業後に様々な経験を積んでリーダーシップを開花される方もたくさんいらっしゃいますが、起業前から素養がある方は強い。組織戦ができて初めて事業拡大が可能になるためです。

逆に、前職でラフな仕事をしていた方や厳しいシーンで逃げてしまった方、不義理を働く方、礼節を欠く方は、時間の経過とともに社内外の支持が得られなくなり事業拡大が難しくなると感じています。

これから起業されようとしている方は、起業前の前職や学生時代に全力でやり切る経験や実績を出すこと、メンバーから真に信頼されるような振る舞いを実践し続けることに留意してもらえればと思います。

 

■独自の事業展開シナリオを持ち、ファンを増やし進化を続ける

事業拡大の予兆の3つ目、応対の質の高さはしっかりしていると認識される言葉遣いやMtg時の姿勢から判断されます。

資料の作り方や説明の仕方、Mtg後の挨拶などにも表れるもので、ココがしっかりしている方は創業期で事業が脆弱でも応援者が増えていき、時間を経過するごとに有利になっていくと感じています。また応対の質の高い方は、素直さとこだわりのバランスに優れている傾向があり、本質的なアドバイスを指摘されたり、それをそのまま吸収し実践できたりするため、起業家・経営者としての進化も早かったりします。

逆に、極端な表現や一方的な話をする起業家は初期に事業が伸びるものの、自己流から抜けだせず社内外から本質的な課題指摘やアドバイスをうけられなくなり伸び悩むことが非常に多い。仮に実績者から的確なアドバイスをもらえても、自己流に解釈し実行するため結果が出ません。経営管理などの守りの部門の弱さとして、応対の質の低さが表れたりもします。

この応対の質は、様々な人や企業とのやり取りを通じて磨き続けて欲しい素養です。

 

事業拡大の予兆の最後4つ目は、独自の事業展開シナリオを持つこと。

創業期は、やったことが無いことに取り組むことがほとんどなのですが、事業を伸ばす起業家は精度に差はあれ創業期から5年ほどの長期プランを立てていて、その達成のためにいつ何に取り組みどんなことを実現するか、1～3年毎にしっかりした目標を立てている方が多いと感じています。

その事業展開シナリオに、自身の強い意志と経験をもとに独自の工夫を織り込んでいるのも特徴です。

今回、冒頭にお伝えした創業上場社長や、前職時代に創業期に出資し2023年に上場したAnyMind Group十河社長も、創業期からあまり聞いたことが無い独自の事業展開シナリオをお持ちでした。
・例えば十河さんはシンガポールに本社をおき、創業1年目にはタイ・インドネシア・ベトナム・台湾・カンボジアに100％子会社を設立し事業を展開されていました。

1～3年毎の目標を立てつつ工夫を織り込んだ独自の事業展開シナリオがあるからこそ、見たことのない遠くの目的地にたどり着ける。そう思っています。

 

意義のある大きな事業を創りたいと考えている起業前・起業直後の方は、お伝えした4つを押さえ、事業拡大にトライして頂ければと思います。
・桁違いの「量」をこなす
・前職・学生時代に実績を出す and/or 良い評判を得る
・応対の質を高める
・独自の事業展開シナリオを持つ

 

また、起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回、第7回、第8回、
第9回、第10回、第11回、第12回、第13回、第14回、第15回、第16回、第17回もご参考にしてみてください。