#志
先達に学ぶ -第19回 伸びる企業の定石-
■「起業ノウハウ」について
皆様、こんにちは。
国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役社長の宮宗(みやそう)と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。
私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、合計21社の上場/Exitに携わってきました。またこれまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。
2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、
・起業
・増資・融資
・組織作り
・経営推進・事業拡大
・上場
を中心に、取り上げていきます。
今回は、伸びる企業の定石。
先日、ある企業様のご好意で都市対抗野球を初めて東京ドームで観戦させていただきました。観客は2万人を超え熱気あふれる中、延長でサヨナラとなる劇的な試合展開になりました。
プロ野球と違い、観客は地区予選を勝ち抜いた企業の社員・お客様・関係者の方々が中心。晴れの舞台で社員や関係者が一堂に集まり、企業色・郷土色を打ち出しながら双方のチームを一生懸命応援し一体感も生まれる本当に良い場だなと思いました。
※2024年7月、都市対抗野球の様子
その日に勝ったチームはオーナー企業の野球部だったのですが、創業者の方がご存命でその試合の様子を観客席でみていたら、
・創業期からは比較にならないぐらい、社員・お客様・関係者の方々が増えたこと
・そうした様々な方々に支えられ、大きな事業を手掛けるまで自社が成長したこと
・応援を通じて、社員・お客様・関係者が1つになることの素晴らしさを体感できること
・野球部のメンバーや応援団も、勝利を目指して練習し一致団結することの良さや勝利の醍醐味を経験できること
・多くのお客様・関係者の方々の支持を得て今があることに、社員が気づける機会を提供できていること
・同窓会的な形で社員・お客様・関係者が交流する場を設けられていること
に、涙して喜ぶのではないかと感じました。
同時に、上記のようなことを押さえよう/機会を増やそうと努力を続ける起業家は結果として大きな事業を創り、軽視する起業家や経営陣が率いる企業は長くは続かないとも思いました。
私自身、前職に転職した2002年から、スタートアップへの出資と並行して業界の枠を超えた戦略コンサルティング業務にも携わるようになりました。その仕事を通じてマーケット動向に関しては過去から最新のものまでみるようになり、スタートアップから大企業まで規模を問わず成長事例にも触れるようになりました。
今回はそうした中で見えてきた「伸びる企業の定石」をお話します。
■リーダーが「独自の価値観」を持っているかが重要
これから伝えることは全てに再現性があるわけではなく、「定石という基礎だけが共通していて、上に乗るものは業界や環境に変わってくる」そんなイメージで捉えてもらえればと思います。
幸運にも、これまで売上ゼロから1千億円の事業を作り上げた方4人にお会いすることができました。インタビューもさせてもらい、上場して時価総額1千億円を超えた企業のトップとまだそこに至っていない方にもお話を聞いて分析したこともあります。 まず時価総額1千億円とか、業界1位になりグローバルで伸びている企業のトップは、全員「独自のビジョン」や「独自の価値観」を持たれているのが印象的でした。
なぜ独自のビジョンや価値観が重要なのかというと、世間が比較的アバウトだからだと私は考えています。
「次はこの業界が成長する」と言われていても、そうならないことは多い。つまり自分の中に軸が無いと周囲の声に流されやすくなります。例えば2000年代に「次はこれが来る」と話題になった業界の1つにクリーンテックがありました。ですが、当時事業を行なっていた企業はアメリカでも日本でもほぼ全滅してしまいました。
世間は正しいことを言っていることもありますし、全くもって虚ろで、噂が噂を重ねていることもあります。だからこそ「流されない軸」、つまり独自の価値観が必要だと思っています。
また独自の価値観がある人は魅力的ですし、「この人と一緒にやろう」となりやすい。ソフトバンクの孫さんは「夢と志は違う」と定義されています。「自分だけに閉じるのが夢、周りに向かうのが志。周りに向かうことで人を惹きつける“錦の御旗”になる」とおっしゃっています。 起業家のピッチを聞いて「どこかで聞いたことある」と感じることがありますが、それでは勝負してはいけないと考えています。MBA的な要素は押さえつつ、それを超えるものを掲げている方は伸びている。これは大企業でもスタートアップでも変わらないと思っています。
■人の意識に焦点をあてるリーダーが率いる組織・企業は伸びる
もう一つ。伸びる企業のTopは、多くの方が「人の意識」に強く焦点をあてているのが印象的でした。
京セラ創業者の稲盛さんも「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」と定義しています。NIDEC創業者の永守さんも「能力は2倍・3倍の差だが、意識は100倍の差になる」とおっしゃっています。 このように大きな実績を出される方は、人の意識と向き合っている方が多いと感じています。
冒頭にふれた都市対抗野球の観客席で私が強く感じたのも、一体感のある人・チームの力でした。
近年のスタートアップの起業家は、流行しているテクニックを重視し過ぎていたり、自身が儲かるため創業期に焼き畑をして信頼棄損をしていたりするような方も多く見受けられますが、それだと自社を大きく成長させるのは難しい。
何を基軸に物事に取り組むかを示す「錦の御旗」を最初に掲げ、一人一人お客様を集め熱狂的な支持を得る。どういう人を採用するか決めてメンバーを増やす。メンバー・チームを育成しながら一つのチームに組み上げていく。Top・経営陣がどういう意識・姿勢をもとにそれらを追求し、お客様・社員・株主・応援者を増やしながら彼らから支持される行動をとり進化を続ける。
こうした形で様々な立場の「人の意識」に強く向き合うTop・リーダーは、大きな事業を創る可能性が高いと感じています。
大企業でもスタートアップにも共通して言えることですが、同じ施策でも誰が率いて進めているかで到達点は全く異なります。経営者の価値観や動機、何に焦点をあてて活動しているか、その経営者の活動量で組織全体の筋力が決まります。それだけ企業活動はTopの影響力が色濃く反映されるものだと思っています。
今回は、「伸びる企業の定石」として、Top・リーダーが有する資質2つをお伝えしました。次回の起業ノウハウでは「経営者の価値観」以外で事業を左右することをお伝えします。
また、起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回、第7回、第8回、
第9回、第10回、第11回、第12回、第13回、第14回、第15回、第16回、第17回、第18回もご参考にしてみてください。
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