先達に学ぶ -第20回 伸びる企業の定石(後編)-

■「起業ノウハウ」について

皆様、こんにちは。

国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役社長の宮宗(みやそう)と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。

私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、累計24社の上場/Exitに携わってきました。またこれまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。

2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、
・起業
・増資・融資
・組織作り
・経営推進・事業拡大
・上場
を中心に、取り上げていきます。

今回は、伸びる企業の定石(後編)

前回は、前編として自社を大きく成長させるTop・リーダーが持つ共通な価値観をエピソードと共にお伝えしました。

今回は、経営者の価値観以外で「事業の到達点を左右すること」を、スタートアップ・起業家の観点も踏まえながらお話します。

 

■市場参入のタイミング、戦場の定め方、大胆な施策の実行が鍵

結論から伝えると、一番大切なのは市場参入のタイミングだと考えています。

企業の成長を考えた時に「巨大市場の黎明期に関わっているどうか」は大きなポイントです。「本当にこのビジネスが確立されたものになるのか?」「新しい価値観や新習慣を定着させて伸びていけるか?」などいくつかの要素が無いとポジションは作れません。これも虚像に惑わされず、前回の起業ノウハウでお伝えした独自の価値観をもとに考え抜かなければ見出せないものだと思っています。

何もない所から起業される方は、最初は受託や手掛けられる範囲のことで事業を始めても良いのですが、事業を拡大させたいと思いながら今の延長でその道が見えないなら、既存事業を大胆にピポッドさせ別事業での業績拡大を目指す必要があります。

一方、日本のスタートアップを見ていると「産業全体の中の一部がアナログだからネットに切り替えよう」のような傾向が強いと感じています。そうした発想は、「巨大産業の黎明期」ではありません。「やりやすい」とか「今持っている資源でシェアが取れる」などの発想です。気持ちは理解できるのですが、スピード感が求められるスタートアップを標榜しながら市場規模が小さい場所で戦い続けてしまいがちな企業が増えていると感じています。将来は予測しづらいものですが、大きな事業になりにくいものは、最初である程度決まってしまうと思っています。

次に重要になるのは、どこで戦うか。戦場設定です。

例えば、現代で二股ソケットを売っても、その企業はパナソニックにはなりません。(二股ソケットはパナソニック創業当時のヒット製品。松下電器製作所時代に販売され、同社の成長の礎を築きました)。

どのような領域にも必ず競合はいて、競合を意識したうえで、どのような魅力を出していくか、ファンを増やすかを考えなければなりません。特にスタートアップが切り込んでいく新しいマーケットは、まだ市場が存在すらしていないことがあります。戦う場所を自ら設定できるからこそ、独自の価値観をもとにタイミングに応じて「戦う場所」を的確に設定する事が大事です。

応用にはなりますが、勝負所で「大胆な施策」を打ち出せるかどうかも勝敗を分けると思っています。既存施策の延長だと一定の成長率で売上は伸びる可能性は高いのですが、飛躍が起きません。「小が大をうっちゃる」。スタートアップは基本そうした施策が求められると考えています。

 

「市場参入のタイミング」、「戦場の設定」、「大胆な施策」に関して、ネット上でも公開されていて私も好きなエピソードをご紹介します。

JINS田中社長は、上場された時は業界で5〜6番目。赤字だったそうです。悩みを抱えながらファーストリテイリングの柳井さんに相談したら「あなたのビジョンは何なのか?」とかなり厳しく叱咤されたそうです。

田中さんは改めて何をしたいかを熟考し、「世界的なブランドを作りたい」と考え、大きな投資を行い、ブルーライトカットのメガネの製造・販売など「大胆な施策」を実行に移し「視力が良い人がメガネをかける」という新習慣を世の中に浸透させ、国内1位のアイウエアカンパニーに成長を遂げました。今は世界一を目指し世界各地域での店舗拡大を進められています。

 

■経営幹部やメンバーから建設的な提案がなされる組織か?

組織も事業の到達点を左右する重要な要素です。

「いや、こう進めるのも1つだと思います」と経営幹部やメンバーが提案できる組織は強い。

企業は上司が伝えたことをそのまま実行するのが通常ですが、上司も完全解がわからないまま指示を出していることがあります。そうしたことを踏まえながら、建設的な提案が経営幹部やメンバーでなされる組織は、実行力も高いケースが多いと感じています。

ある上場ベンチャーは、CFOがきちんと意見する方で業績も確実に伸ばしています。異なる価値観が交互に重なり合っている印象です。また、論理的な経営システムを押さえつつ、理念を持つ企業は強いと思っています。京セラなど典型例だと思いますが、定量的で論理的な経営システムを構築しながら、その上にストーリーや理念を乗せている。これも、独自の価値観やビジョンがなければできないことです。

まとめると、市場の選び方や、経営者の資質、そこに関わる経営チームが揃うと、求心力が伴って人が集まる。「社長は少し弱みがあるかもしれないけれど、この人のビジョンを具現化しよう」となると強い。

ホンダの本田宗一郎さんや、ソニーの盛田昭夫さんなど。どの領域を選ぶかという違いはありますが、定石や本質は共通していると思っています。これまで、色々な「実績者」にお会いさせて頂いた中での経験則です。

ちなみに、失敗の定石もあると思っています。例えば、時価総額を伸ばすことに苦戦されている上場経営者の方にインタビューをすると ・トップだけの経営推進に、限界を感じている ・競合を見ていないなどの共通項があると感じています。

事業は、誰がリーダーとしてけん引するかで結果が大きく変わります。

世の中にとって必要とされ、お客様から熱狂的な支持を得るような商品やサービスが1つでも多く生まれるよう、私共DIMENSIONチームで少しでも貢献できればと思っています。

 

また、起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回
第9回第10回第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回もご参考にしてみてください。

 

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